子どもの「非認知能力を伸ばす」ために教員が意識したい声かけと行動 岡山大・中山芳一「学習指導要領」実現のヒント

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「私たちは、非認知能力を自制心や忍耐力のような『自分と向き合う力』、意欲や向上心のような『自分を高める力』、共感性や協調性のような『他者とつながる力』の3つのグループに分けています。しかし、その能力は客観的な点数で評価することができません。例えば、忍耐力がある人はストレスをためてしまう、自信のある人は過信につながりやすい、協調性がある人は自分の主張を控えがちになるといったプラスとマイナスの両面を持っています。つまり、非認知能力は伸ばせば伸ばすほどいいというものではなく、状況によって、使いこなせるようになることも大事になってくるのです」

非認知能力の3つのグループ

自分と向き合う力:自制心、忍耐力、回復力(レジリエンス)など

自分を高める力:意欲・向上心、自信・自尊感情、楽観性など

他者とつながる力:共感性、協調性・社交性、コミュニケーション能力など

認知能力と非認知能力を支える土台「自己肯定感」

今、学校現場で課題となっているのは、子どもたちの非認知能力のうち、とくに「意欲」「向上心」「自信」が低くなっていることだという。

「認知能力を家の内装や外装とするなら、非認知能力はそれを支える柱や筋交い、さらにこれらを支える土台となるのが自己肯定感(とくに自己受容感)です。この自己肯定感を育むには、どれだけ無条件で受け入れられてきたかが必要となります。とくに乳幼児期に欠かせないと言えるでしょう。自分という存在が無条件で受け入れられてきた子どもは、他人も受け入れることもでき、他人と自分を比較したときでも自己否定をしなくなります。つまり、乳幼児期にどれだけ受け入れられてきたかが問題となってくるのです」

日本の子どもの自己肯定感は、OECDや日本財団の調査でも諸外国と比較して低いことが明らかになっている。また競争にさらされやすい日本の教育環境や、情報の氾濫による子育ての複雑化などで、親も自信が持ちにくい状況にあり、子どもを追い込んでしまっている可能性もある。

では、この非認知能力は、いつごろまで伸ばすことができるのか。乳幼児期を過ぎても、小・中学生や高校生になっても伸ばせるものなのだろうか。

「思考や感情、意識を司る脳の前頭前野が構成される0~4歳が大事な時期ですが、そのあとは10~18歳でとくに変容しやすくなるとされています。当然ながら伸び盛りの時期にさまざまなよい刺激を与えることが必要です。この時期を過ぎると脳は基本的に出来上がってしまいますが、18歳以降でも非認知能力を伸ばすことは可能です。むしろ忍耐力や協調性といったものは、大人になったほうが伸びやすいともいわれています」

だが、例えば親が子どもに忍耐力をつけさせたい、向上心を持ってほしいと思っても簡単に変えることはできない。非認知能力は、性格や価値観、感情など自分の内面に関わる力のため、自分の意識によって変わりやすい、つまり自ら伸ばしていく力だからだ。逆に、大人になっても非認知能力を伸ばせるのは、意識して自分を変えることができるからである。

そのため、問題を解くなどの訓練をすれば伸びる認知能力とは異なり、外部から介入がしにくいのが難しいところだ。では、本人以外の大人は、子どもの非認知能力を伸ばすためにいったい何ができるのだろうか。

「親や学校の先生は、本人が伸ばしたい、必要だと意識するようになるための『意識づけをする』というサポートができます。非認知能力を伸ばすきっかけを与えることが大事になってくるのです。それが誉め言葉であったり、何らかの気づきが得られるような機会を提供することだったりになります。こうした働きかけによって、子どもは非認知能力を自ら伸ばせるようになることが期待できるでしょう」

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