なぜ母親は怒ると止まらないのか、父親の「指摘」「逆ギレ」との違いは 30年前と大違い、過酷な"令和の子育て"事情
「怒りは自分がパニックに陥っている表れであり、愛情の裏返しでもあります。わが子の教育に関しては、母親の方が怒りっぽくなりがちですが、それも体に根ざした深い愛情ゆえ。子育て本などでは、子どもを感情的に怒ってはいけないと書かれていますが、そういわれても困りますよね。一生懸命に子育てしていれば、怒りは当然生まれるのです。一度出た怒りは無理せず吐き出して、理性を取り戻してからわが子に謝ればよいのです。それよりも、『怒らない自分になろう』とするほうが危険。自己嫌悪が募って苦しくなり、体調を崩したり心を病んでしまったりと、むしろ子どもにマイナスな結果になりかねません」
怒りには、大きく分けて4パターンあるという。「焦りや不安から生まれる怒り」「子どもに裏切られたことによる怒り」「期待値が高すぎるがゆえの怒り」「人目を気にしたしつけのための怒り」だ。
:9割がこれに当てはまる。熱心に子育てをしている親に多い
●子どもに裏切られたことによる怒り
:嘆きに近い感情。例えば、宿題をやると約束したのに破られたときなど
●期待値が高すぎるがゆえの怒り
:親が定めた基準にわが子が当てはまらず、思いどおりになっていない時に感じる。子どもの実情を踏まえず、「これくらいできて当然」「自分が教えたのだから理解して当然」と勝手に期待してしまっている
●人目を気にしたしつけのための怒り
:集団生活を行ううえで、人目を気にするあまり、つねに行儀よく振る舞わせようとする。都市部に特有で、親として批判的に見られることを恐れる場合もある
「3つ目の期待値が高いがゆえの怒りは、せっかく調べて試したことがわが子に通用しないときや、信じてきた勉強法が結果につながらなかったときにも感じます。情報量が多い現代だからこその怒りです」(小川氏)
怒る自分を責めてしまう人は、自分をいたわる時間をつくってほしいと小川氏は助言する。
「ママたちにお勧めなのがネイルサロンや美容院です。きれいにしながら話も聞いてくれて、自分のためだけに尽くしてもらえる。他人に大事にされる感覚を味わえるので、心身のメンテナンスになるようです。こうした隠れた価値は男性陣にも知ってもらいたいですね。お気に入りのカフェで自分のためだけの時間を過ごすのもお勧めです」
母親は「命懸け」だから怒り止まらず、父親の怒りの理由は2つ
では、夫婦の役割分担はどうすればよいのか。夫婦の教育方針が一致しないケースも多いが、小川氏は「そもそも母親と父親は本質的に違う」と指摘する。母親は妊娠して以来、四六時中気を抜けず、まさに一心同体で命懸けで子育てをする。これに対して父親は子どもとの身体的なつながりはないため、観察力や共感力を働かせて頭で子育てをする。「男女平等の概念を超えた生物レベルの話で、母親と父親は担うものが違う。それを受け入れ、互いを理解することが大切」と小川氏は強調する。
「母親と父親では、当然怒り方も違います。母親はなぜ怒っているのか自分でもわからず、一度怒り出したらブレーキがかけられないことも多い。その際は周りの大人が救済しなければなりません。母親がすでに十分子育てを頑張っていることを認め、命懸けの子育てから少しでも解放できるように育児や家事をフォローし、『これ以上頑張る必要はないよ』と一つひとつ許容して手放す手助けをしてください」
逆に、父親の怒りの理由は明確だという。
「顕著なのは、父親の自分が立てた目標から外れたことによる“間違い指摘型”の怒り、もしくは妻が相手をしてくれないことへの“逆ギレ”です。実は、夫が妻に甘えられない原因も現在の社会構造にあります。昔は子どもが2歳を超えて話し始める頃から、母親も少しずつ子育ての心配事から解放されました。余裕が生まれて夫と向き合う時間が増え、そして子どもが小学校に入れば、再び夫婦としてスタートを切り直せる流れがあったのです。しかし今は、将来の不透明感から不安や焦りがいつまでも消えません。自分の家庭は朗らかであってほしいと願う夫は、妻が怒り続ける状況に対してイライラしてしまうのです」