なぜ母親は怒ると止まらないのか、父親の「指摘」「逆ギレ」との違いは 30年前と大違い、過酷な"令和の子育て"事情

少子化ゆえに子育てはハード、罪悪感があってもやめられない

教育家・見守る子育て研究所所長。京都大学法学部卒業。コーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、子ども個々の才能タイプに基づく独自の成績向上ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、「“見守る子育て”を日本の常識にする」をミッションに掲げ、人の隠れた才能を見つけ引き出す技術体系「見守る子育て」の普及に務めている。『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)、『子どもの頭のよさを引き出す親の言い換え辞典』(青春出版社)など著書・監修多数。YouTubeチャンネル「小川大介の『見守る子育て研究所®』」
(写真は本人提供)
“最近の親は怒りっぽい”、そんな言葉を耳にするが、それは「今の時代だからこそ」と力を込めるのは、見守る子育て研究所所長で教育家の小川大介氏だ。そもそも30年前と今の子育てを同じ土俵で比較すること自体がナンセンス。令和に子育てをすれば、誰もが怒りっぽくなって当然だと説明する。
「令和の子育ては過酷です。情報過多で身に付けるべきとされる知識やスキルが膨れ上がる一方、何事も先取り先取りと急かされます。子どもの育つままにして、将来無事に社会へ出られるなら苦労しません。実際、一昔前は社会が成長軌道にあって人口も多く、多様な労働の受け皿がありました。団塊世代を中心に子どもを見る大人も大勢おり、当時の子育てはある程度環境に任せられたのです」
それに対して現在は、職業選択や経済格差がよりシビアで、さらに人口減少や少子化が進んでいる。家族以外の大人や友人を通じて得られる学びが少ない中で、親がしっかり教育しなければという焦りや不安があるのだ。中には、「昔と比べ、今は兄弟姉妹も少ないのだから楽なはず」という意見もあるそうだが、小川氏は「子どもの数が多いと、母体を守るためにも無意識にブレーキがかかり、ある意味サバサバと子育てできます。しかし1人や2人の場合、何とか全力で頑張りきれてしまう。だからこそ大変なのです」と明確に否定する。
「とくに都心部の親は、子どもが『学歴的な安全ゾーン』で成長しているという安心感を早くから得たい。その結果がヒートアップし続ける中学受験でしょう。親も本心では子どもの成長を待ちたくても、社会構造が許しません。大半の親は、実はこうした教育に罪悪感や疑問を抱いているのですが、とはいえ誰も将来安泰な子育ての代案を示してくれない。何かがおかしいと感じながらも仕方なく、過度な教育レースに踏み込んでしまうのです」
親は感情的に怒ってもよい、9割の原因は「不安と焦り」
小川氏は、子どもにイライラしてしまう親の特徴として「まじめ」「努力家」「愛情深い」ことを挙げている。