独学?習う?プログラミング授業の準備と現実 すでに必修化、子どもや学校は何をすべきか?

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2020年4月から小学校でプログラミング教育が必修化されているが、学校現場では戸惑いも見られる。文部科学省が手引や教育指導案集を発表しているものの、具体的な教材や授業の実施方法が定められていないことも一因だろう。そこで、有識者3名に取材し、プログラミング教育についての集中連載を企画。プログラミング教育に対する基本的な考え方から授業への取り組み方、授業の設計方法、実際の児童の反応や意外な落とし穴まで実践的なアドバイスを収集した。連載1回目の本稿では、「なぜプログラミング教育を行うのか」という第一歩から子どもへの向き合い方までをお伝えしたい。
第2回中高を視野に「プログラミング授業」は小1から<授業設計の基本思想編>
第3回プログラミング授業の作り方と教材選びの要諦<教科・ソフトの選び方編>
第4回 「プログラミング授業」意外な落とし穴と対処法 <ICT支援員編>
第5回 プログラミング「理解ない管理職」の巻き込み方 <コミュニティ編>

そもそも必修化の背景とは何か?

改めて言うまでもないが、プログラミング教育はこれまでになかった学校教育だ。だからこそ、まだスタイルが定まっておらず、現場の戸惑いも大きい。教育の情報化について研究を重ね、小学校での研究授業の指導も多数実施してきた東京学芸大学ICTセンター教育情報化研究チームの加藤直樹准教授は、次のように話す。

「プログラミング教育は、10人集まると10通りの考え方が出てきます。考え方次第で授業の流れも変わってきますので、今の段階ではいろいろな考え方から、やりやすい方法を選ぶのがいいでしょう」

その手がかりをつかもうとして、学習指導要領や文部科学省「小学校プログラミング教育の手引」(以下、手引)をひもとく教員も多いだろう。しかし、全国の教員・教育機関にプログラミング教育の研修や教材を提供するNPO法人みんなのコードの代表理事、利根川裕太氏は、いきなり学習指導要領や手引を読んだばかりに、迷いを深めてしまうケースが散見されるという。

「『学習活動の分類(※1)は何を選べばいいのか』、『プログラミング的思考とは何か』といった疑問を口にする先生が少なくありません。それは、プログラミング教育が必修化された背景を踏まえず、一足飛びに具体的な方法論を考えてしまうからだと思います。では、なぜこのタイミングで必修化されたのかというと、政府がSociety 5.0(※2)を提唱しているように、社会が急速にIT化しているからです。すでに、家電や自動車など身近なものの多くにコンピューターが内蔵されていますが、今後さらにコンピューターを使うのが当たり前の世の中になっていきますので、子どもたちがちゃんとコンピューターと付き合えるようにしてあげなければいけません。その目的を達成することを念頭に置けば、方法論についても自分自身で判断できることが多くなると思います」

NPO法人みんなのコード 代表理事 利根川裕太
慶應義塾大学経済学部卒業後、森ビルを経て、ラクスルへ。その後、特定非営利活動法人みんなのコード設立。著書に『先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本』(翔泳社、共著)、『なぜ、いま学校でプログラミングを学ぶのか-はじまる「プログラミング教育」必修化』(技術評論社、共著)がある
(撮影:今井康一)

確かに、スマートフォンやタブレット端末、パソコンだけでなく、音声操作できるAI搭載のスマートスピーカーがある家庭も増えている。今後、Society 5.0の実現に向かうにつれて、さらにコンピューターは身近な存在になっていくだろう。プログラミング教育の第一歩で、そのイメージを児童と共有して「プログラミングの意味」を伝えるのが大事だと主張するのは、全国に先駆けて小学校でのプログラミング授業を推進したことで知られる、元小学校校長で合同会社MAZDA Incredible Lab CEO 松田孝氏だ。

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