英語教師としての経験も糧に、子ども4人東大合格「佐藤ママ流教育」確立の裏側 子育ては18歳まで、「自活」のための親の役割

2年間の英語教師としての経験が子育てにも生きている
――佐藤さんは大学卒業後、地元大分県の私立高等学校で英語教師をされていましたね。なぜ教師になろうと思われたのでしょうか。
大分で育って大学は東京に行きましたが、実家の母親が寂しそうに見えて。卒業後、結婚するまでは親孝行しようと地元に戻ったんです。でも、大分はたくさん企業があるわけでもなく、たまたま大学時代に英語の教員免許を取得していたので、先生になろうと思ったんです。公立の教員採用試験も受けて合格したのですが、新人は例年、実家から遠い場所に勤務させられてしまう。それでは地元に帰った意味がないと、声をかけてくださった私立高校で英語教師をすることにしたのです。
――ご結婚されるまでの2年間、英語教師をされましたが、その経験が後の子育てに役立っているところはありますか。
すごくあります。教師になるまではずっと教えられる側でしたが、教える側になった途端、見える世界がこんなに変わるのかと思いました。受動的から能動的な姿勢となり、これまでの考え方を変えなければ生徒には何も伝わらない。そのために生徒の気持ちを理解できるように努力しました。
これは子育ても同じで、つねに親の立場から考えるのはよくないと思っています。自分が子どものときに親を見ていた感覚を大事にしながら、自分の子育てに生かそうとしました。立場の逆転は意外に大事なことで、例えば教師にキツイ言葉を投げかけられたら、生徒は傷ついてしまいますよね。年が若い子にかける言葉は、ちゃんと考えないと実力を伸ばしてあげられない。同じように子どもが親の言葉に対して、どう感じるのか。つねに立場の逆転を考えながら、子どもたちに接するようにしていました。
――英語教師の経験から、教え方について学んだことはありますか。
授業では教科書どおりに話しても駄目で、自分の経験に基づいた自分の言葉で語らなければ、生徒には伝わらないと思いました。授業で生徒たちが騒ぐのも、授業がわからないからだと気づいたんです。そのため、少しやさしくしたプリントで何度も練習させました。すると、しだいに静かになって、生徒たちは楽しく授業を受けるようになったんです。
子どもにやる気がなかったり、テストの点数が取れなかったりすると、親は「集中してやりなさい」と精神的に追い詰めるものですが、実はそこには具体的な原因があります。そんなときは、子どもの目線まで下りていって原因を探り、「わかる」という感覚を持たせるようにしたほうがいい。「わかる」と積極的になり、集中し始め、やる気になり明るくなるんです。
――子どもの「わかる」「できる」という感覚が大事だということですね。
高校では英検(実用英語技能検定)を取り入れました。生徒たちは当初は嫌がっていましたが、結果的に8~9割が合格しました。合格した生徒たちの名前を廊下の壁に張り出すと、目を輝かして喜んでいるんです。そのとき英検のような世間の評価も大事だと思いました。子どもは、自分が努力した成果を感じ取れることが自信につながっていく。最近は、子どもの自己肯定感を上げるべきだといわれていますが、こうした成果を積み上げていくことが自己肯定感につながっていくのだとつくづく感じています。
「佐藤ママ流」の教育法はどのように確立していったのか
――ご結婚後、第1子が生まれましたが、当初から教育に対するこだわりをお持ちだったのでしょうか。
第1子を授かったとき、社会に出ても自分の力で食べていけるような子に育てたいと思いました。よく子どもの自立のために「幼稚園の時から一人で靴下を履けるようにする」「小学校なら自分で宿題をできるようにする」と言いますが、自立といっても精神的、経済的、社会的といろいろあり、そもそもあいまいです。そんな自立を子育ての目標にするよりも、どんな時代になっても子どもたちが自分で食べていける「自活」を私は目指すことにしたのです。