外国人12人に1人の町が始めた、「一歩進んだインクルーシブ教育」の中身 愛川町「インクルーシブサポーター」の役割
「この5人は外国籍だということです。当校はそうでもないのですが、日本国籍であっても外国にルーツがあって支援の必要な子は他校だと多くいます。そして、不登校や発達障害などの子が増えているのは、当校でも同じです。通常学級(通級)の子でも、気配りが必要な状況は増えていると思います。インクルーシブ教育が求められています」と、半原小学校校長の佐野昌美氏は言う。
そして同校は、愛川町のインクルーシブ教育の研究校になっており、教育委員会が言うところの面のインクルーシブ教育を推し進めている。その同校のインクルーシブ教育を教育相談コーディネーターという役割で引っ張っているのが、斉藤美香氏である。
「私は赴任して今年で4年目ですが、その前からインクルーシブ教育に対する教員の関心度は高く、取り組みの質も高いと思っています」
外国にルーツのある子どもたちの数は少ないとはいえ、愛川町にある学校として、その問題と向き合わなければならない環境が大きかったはずだ。そして、支援の必要な子が増える中で、その意識は強くなってきたともいえる。インクルーシブを意識する中で、教員の授業の進め方も変わってきたという。斉藤氏が続ける。
「教員が児童に質問するとき、『言葉だけではわかりにくい子がいるのではないか』という発想をします。そこで、質問を文字にもしたりして改善しています。説明の仕方も、例えば絵を描く授業で『ちゃんと塗りなさい』という説明より、『白いところが残らないように端まで塗りましょう』という説明のほうが伝わるよね、といった話を教員間でよくします。音が気になる子には教室の静かな席を選んであげたり、黒板に書かれたことをノートに写すのが苦手な子には『iPadで撮影していいよ』といった指導を心がけます。そうした授業改善を積み重ねていくことで、誰もが学びやすい環境をつくっています」
そして半原小学校では、異学年交流も意識的に、積極的に行われている。佐野氏が説明する。
「1年生と6年生で学校探検をやりました。6年生が1年生に学校案内をするわけです。すると普段は教室に入るのが困難な6年生が、1年生と手をつないで学校の中を歩いているということが起こりました。『ニコニコ(2525)プロジェクト』というのもありまして、5年生が2年生を幸せにするプロジェクトです。勉強を教えたり、読み聞かせをしたり、一緒に遊んだりしていました。そういう中で、問題のある子も問題のない子も楽しめるようになっています」
半原小学校では、学校が誰にとっても「居場所」になっている。まさに、共生である。インクルーシブ教育というと外国にルーツを持つなど特別な子だけを対象にしていると考えられがちだが、実は、すべての子どもたちのためのものだ。必要とされているのは、特別な支援が必要な子も含めて、すべての子どものためになるインクルーシブ教育である。
(写真:Pangaea Pangae/de PIXT9)
執筆:フリージャーナリスト 前屋毅
東洋経済education × ICT編集部
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