UUUMが「過去最大の赤字」、創業10年で迎えた危機 ショート動画拡大が逆風に、決死の人員削減へ

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YouTubeショートとは、最大60秒の縦型動画のことで、日本では2021年からYouTube上でサービスが開始されている。Google合同会社でYouTubeクリエイターエコシステムパートナーシップ統括部長を務めるイネス・チャ氏によれば、「(ショートは)Z世代の若者を中心に多く利用され、通常の動画への誘導に使われている」という。

ショート動画人気の火付け役となったのは、中国のバイトダンスが運営するTikTok(ティックトック)だ。今ではYouTubeにおいても人気コンテンツとなり、再生数の多くをショートが占めるようになってきている。実際、UUUMでも直近の3月から5月にかけては、ショートの再生数が通常の動画の再生数を上回る水準にまで増加した。

ショートの急速な拡大を受けて、YouTubeは2023年2月からショートへの収益分配も開始した。これまで広告収益の対象となっていた通常の動画だけでなく、ショートからも収益を得られるようにしたのだ。

UUUMの業績推移

しかしUUUMにとって、ショートからの収益が入ったところで通常の動画の急速な落ち込みをカバーするには至らなかった。

とある業界関係者によれば「ショートから得られる広告収益は通常の動画と比べると微々たるもの。1億回の再生数に対して100万円程度(1再生あたり0.01円)なので、採算はとりづらい」と明かす。「通常の動画の1再生当たりの単価は0.3~2円程度」(同関係者)であることから、ショートはかなり多くの人に見られない限りお金にならないようだ。

「ショートではアルゴリズムの関係で、チャンネル登録者数に関係なく動画が再生されるため、新規のYouTuberは認知されやすくても、人気YouTuberほど恩恵が小さい」。UUUM関係者はそう漏らす。人気YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては、不利な状況ともいえる。

広告収入依存からの脱却を目指したが…

UUUMを襲った「ショートショック」の大きさは、同社がいまだアドセンス依存のビジネスモデルから抜け出せていない現実を如実に示している。

UUUMは2021年末ころからアドセンス収入の伸び悩みに直面し、一部のトップクリエイター頼みの構造になっていたことから、アドセンス依存の脱却を掲げて専属クリエイターの数を大幅に減らしてきた。2021年5月末時点で313組だった専属クリエイターは、2023年5月末時点では181組にまで減少している。

その代わりに、新たな収益柱として育成を目指したのがP2Cブランドやグッズ販売だ。契約解消となった専属クリエイターについても、ブランド商品の展開がうまくいくか否かを基準に選別したとみる関係者が多い。

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