新版 原発のどこが危険か 桜井淳著
なお沈静化に先の見えない福島原発事故。非常用ディーゼル発電機の不作動が引き金になったが、それは本当に「想定外」だったのか。これから検証されることになるが、本書は16年前に刊行の旧版において、今回の「非常用電源喪失」の危険性をかなりのページ数で詳細に指摘し、警告を発していた。
その論拠は、専門的視点でそれまでの世界の原発事故を総ざらいし、原因を追究した結果であり、対応不足が懸念される、説得力のあるものだ。「発電機の起動に失敗する確率は100万分の1」とする専門家の当時の自信は、この警告を一笑に付したのだろうか。
今回のように安全神話が崩れた現実を突き付けられると、ほかにも専門家にとって“盲点”があるのではないかという疑念が湧く。そうでなくとも、多くが老朽化を迎えつつある日本の原発だ。念入りな安全対策をどう進めていくべきか。福島では手遅れになったが、参考になる一冊だ。
朝日選書 1365円
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