ChatGPTの激震で「大学入試」はどう変わる?4つの博士号を持つ冨田勝が今思うこと 生成AIの普及で問われる「人間としての価値」
今回のChatGPTのインパクトを機に、「正解を見つける」といった作業がAIに置き換わるようになれば、ようやくそうした本質に目が向けられるようになると思います。例えば、今は「ChatGPTを使ったらこんなこともできた」と沸き立っていますが、そのうちAIの力だけで作った作品への興味は減っていくでしょう。どんな時代になっても、人間が作ったり考えたりするものには必ず人間的なストーリーが背景にあり、そこに人は感動したり感謝したりするのだと思います。
そうした人間性の本質がAIの普及によってあぶり出され、人間としての価値はどこにあるのかが問われるようになるでしょう。だからこそ、自分が好きなものや得意なものを見つけて伸ばしていき、「人間としての自分の魅力はこれだ」と自覚できる人を増やすことが、これからの教育では大事になっていくと思います。
入試の主流は総合型選抜へ、好きなことは飽きるまでやること
――その流れの中で、大学入試はどう変わっていくでしょうか。
今後、貴重な10代の成長期を過度な受験戦争とその準備に費やすことがいかにもったいないかということにみんな気づくと思います。大学入試も総合型選抜(旧・AO入試)が主流になるでしょう。
1990年にSFCが日本で初めてAO入試を導入しましたが、私も導入に関わった1人です。AO入試は、いわゆる学力だけでなく、高校時代の活動実績や、大学で何をしたいのかなどを書類と面接で人物を総合的に評価するもので、本来これが適切な人の選び方だと思います。
当時、SFCのAO入試は「公平性がない」「学力低下を招く」「客観性がない」「指導の仕方がわからない」といった批判を受けましたが、今では国立大をはじめ、ほとんどの大学で総合型選抜が行われています。総合型選抜や学校推薦型選抜で入学する割合が過半数を超えたともいわれており、従来の一般入試は少数派になりつつあります。
今も進学校や予備校の先生方には、「逃げずに一般入試で勝負しろ」と言って、総合型選抜を「裏道」のように考えている人も少なくありません。でもこれからは、総合型選抜の経験者の数が増え、彼らが教育現場で校長先生になったり、教育行政で教育長になったりしていくので、必ず変わりますよ。
自分の好きなものや得意なものは何か、自分の人生をどう考えているのか。それを前提として大学で何をやりたいのか、学びたいのか。そうしたストーリーを語れることが、今後はさらに入試で問われるようになり、その準備をすることは、その生徒の人生においてとても貴重な時間となるでしょう。
――文部科学省も「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」を公表しましたが、学校現場における生成AIの活用や教員が持つべき視点についてどうお考えですか。
まず活用しないという選択肢はないでしょう。活用しないという選択は電卓を使わないと言っていることと同じです。確かに現状は、生成AIのアウトプットに誤情報が紛れ込んでいる点や、著作権に関するグレーな部分は、当然留意し是正すべきです。しかし将来は、ビジネスや教育現場でも生成AIを適切に使うことが当たり前になっていくはずです。
もし今、私が教員なら、「生成AIを使って〇〇しなさい」という課題を出します。生成AIのアウトプットにおける問題点を考察して、最終的に自分の言葉で説明させるような取り組みをすると思いますね。
一斉授業で教科書を勉強することも必要ですが、正解のない時代に子どもにとってもっと重要なのは、何がやりたいのかを考えること、好きなことは中途半端にせず飽きるまでやることだと思います。


















