たった一人で2300人の児童・生徒を受け持つ「栄養教諭」が抱えるジレンマ 塩分調整・アレルギー対応、学校給食は課題山積
人員に余裕があれば、食物アレルギーがある子どもたちに手厚い専門指導をしたいところだが、現状では一人ひとりの代替食を考えて、手渡しミスがないように段取ることで精いっぱいだそうだ。
「成長期にどう栄養を補うか、いつ自立するかなど、その児童・生徒の成長を成長曲線で確認しながら、もっと個別的な相談や指導をしたいのです。また、万が一アナフィラキシーが起きたときに備えて、例えば補助治療剤エピペンの使用法などを含め医師や薬剤師と連携していくことも栄養教諭の仕事の1つです。子どもたちの命を預かる仕事なので、もっと人員が必要です。栄養教諭が何者であるかを伝え、栄養教諭の担い手を増やすことも、私の大切な役目だと感じています」(中田氏)

栄養教諭の配置拡大については明るいニュースもある。2023年2月、自民党「環境・温暖化対策調査委員会 食品ロス削減PT」(堀内詔子座長)の有識者ヒアリングにて、日本栄養士会の鈴木志保子副会長が栄養教諭の重要性をプレゼンテーション。その結果、同PTが岸田文雄内閣総理大臣に申し入れた提言「食品の寄附や外食時の持ち帰りが当たり前の社会に向けて~食品ロス削減推進法の見直し~」(23年4月21日)に、次の一文が反映されたのだ。
「学校の教科等を通じて、食品ロスの削減に関する理解と実践を促すためにも、学校給食を実施する学校への栄養教諭の配置拡大を進めること」
現在、法改正も視野に政府内で検討が進められている。また、23年6月16日に発表された「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)では、経済社会の活力をさせる教育・研究活動の推進において「栄養教諭を中核とした食育を推進する」との一文も盛り込まれた。
食べることは生きること。給食を心待ちに学校に通った人は多いだろう。その大切な時間と、子どもたちの命・健康を守る栄養教諭にはもっと焦点が当てられてしかるべきだ。

(文:せきねみき 編集部 田堂友香子、写真:中田氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら