モンテッソーリ教育が、もともと子どもが持つ「自ら育つ力」を引き出す深い訳 大人は自己教育力を発揮できる「環境」を整えて

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「人的な部分は、保護者が子どもをどう捉え、どう関わるかが重要です。子どもに対して、育ててあげている、教えてあげていると思っていませんか。そうではなく同じ人格ある人間として対等に接することが大切です。子どもは自分が尊重されているかどうか、敏感に感じ取ります。命令ではなく提案やお願いをすることで、信頼関係が増すのです。大人も子どもの発達について書籍などで知識をつけながら、子どもの育ちを助けることが必要だと思っています」(あきえ氏)

モンテッソーリ教育の実践で大人が気をつけるべきポイント

この子どもを対等に見て尊重するというのは、モンテッソーリ教育を実践するうえで大人が気をつけるべき大切なポイントだ。一人の人格ある人間として向き合うことが、自尊感情や自己肯定感を育んでいく。

「自分も完璧ではないという、謙虚さを持つこと。子どもが間違えたことをすると、大人はつい命令口調で注意をしてしまいます。人間としてお互いリスペクトして関わることが重要で、できなかったとしても大人が勝手にやってしまわないことです。自分も完璧ではない、育っている段階と思えば、子どものプロセスを大切にすることができます」

さらに子どもに対してバイアスを持たないこともポイントだという。例えば、「この子は人見知りだから」「どうせまだできないから」「いつも言うことを聞かない子」などと、一度バイアスを持ってしまうと、その部分が成長したとしても、その成長を感じることができなかったり、肯定的な声かけや関わりが減ってしまう可能性もあるからだ。

「つい大人は、子どもの姿を決めつけてしまうことが多々あります。しかし子どもに限らず、人間は見えている部分がすべてではありません。そこでお勧めしたいのが、子どもを球体として捉えてみることです。球体だと正面から見えない裏側もあります。私たちが地上から見る月も表側しか見えません。それを『月』として捉えているわけです。でも実際は、地上からは見えていない反対側も含めて『月』なのです。このように『自分が見ている(見えている)部分だけがすべてではない』という思いをつねに持っていることが、子どもを尊重することにもつながっていくと感じています」(あきえ氏)

実際、あきえ氏は自身の子どもにモンテッソーリ教育を実践している。その結果、子どもは自発的に計画をしたり、準備をするように育っているという。すベての結果がそうなるわけではないし、モンテッソーリ教育だけが正しいわけではない。ほかにもさまざまな教育方法があり、それぞれにいいところがあって、個人によって向き不向きもある。

「勘違いされることが多いのですが、モンテッソーリ教育は英才教育ではありません。こういう人間になってほしいと大人が決めるのではなく、子どもの欲求を満たすために、大人がどう手助けするかを考え続け、子どもの自立と自律を助けていくのがモンテッソーリ教育の柱です。そうして育った自立した人間同士が尊重し合って調和、平和な世界を目指す――本質をキープしながら、今後日本でもモンテッソーリ教育が広がっていくといいなと考えています」(あきえ氏)

(文:酒井明子、編集部 細川めぐみ、注記のない写真:PanKR / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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