モンテッソーリ教育が、もともと子どもが持つ「自ら育つ力」を引き出す深い訳 大人は自己教育力を発揮できる「環境」を整えて

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今も日本の教育は「教えてもらう」のが学びの中心だ。子どもは幼稚園でも保育園でも、先生からやることやゴールの決まったタスクを与えてもらうのが一般的。小学校でも黒板の前に机を並べ、全員が同じ授業を受ける一律一斉スタイルがほとんどだ。学びが受動的で「やる」「やらない」といった自己選択の機会が少ないことはもちろん、時間やゴールも事前に決まっていて一人ひとりが「わかる」「できる」といった喜びを得にくい。

あきえ氏が抱いた疑問は、自身の子どもを育てる中でより強く感じるように。子育てをしながら保育や発達、教育について調べているとき出合ったのがモンテッソーリ教育だった。これまでの疑問がモンテッソーリ教育ならば解決できると、国際モンテッソーリ協会のディプロマコースに通い、協会認定の資格を取った。

「資格を取るまでにはたくさんの学びがありました。例えば、1歳の子どもが自分で靴下をはくのは無理だと考えがちです。しかし通常の7〜8倍の時間をかけて、ゆっくりはき方を伝えると、すぐにはできなくても自分ではけるようになりました。子どもには自ら育つ力があり、それを大人が信じることが大切なのだと実感した出来事ばかりでした」(あきえ氏)

「自ら育つ力」を発揮できる「環境」を整えることが大切

では実際、モンテッソーリ教育ではどのような教育が実践されているのだろうか。モンテッソーリ教育は0〜6歳の乳幼児期、6〜12歳の児童期、12〜18歳の思春期、18〜24歳の青年期と4段階に分けて発達に合わせた教育が行われる。

だが実際、日本でモンテッソーリ教育が受けられるのは、幼稚園や保育園が中心だ。小学校や中学校は、認可外のオルタナティブスクールになってしまうこともあり数自体が少ない。また全国に習い事としてモンテッソーリ教育を受けられるところもある。

「今の日本では、6歳以降に学校でモンテッソーリ教育を受けることは難しいですが、教育を学校だけに任せないという姿勢を持つことも大切だと私は考えています。とくに幼少期の家庭の影響は大きいです。保護者が主体性を持って学ぶことで実践できるモンテッソーリ教育は多くあります」(あきえ氏)

では保護者が、家庭で実践できるモンテッソーリ教育とはどのようなものなのか。

子どもには、大人が教えなくても自ら育つ自己教育力があるというのがモンテッソーリ教育の基本的な考え方だ。しかし、子どもたちに「今やりたい」という欲求があったとしても、取り組める環境がなければ自ら発達、成長することはできない。そのため大人が、自己教育力を発揮できる環境を整えることが大切だという。子どもを観察して、子どもが今やりたがっていることができるように環境を整えるのだ。

具体的に環境は、大きく物的環境と人的環境の2つに分けられるという。物的環境は、子どもがなるべく大人に頼らず、自分の力でできる環境を整えること。例えば、子ども用の洋服を大人しか手が届かない場所に置くのではなく、子どもも取り出せる場所に配置する。洋服もボタンが背中にあるような自分で着られないものではなく、一人で着替えができる洋服を準備するなどだ。

興味を持ったときや必要なときに自ら取り組める環境を整えることで、主体性や自己選択をする力が育つ。たとえできなかったとしても諦めない粘り強さや、物事に取り組む集中力などを獲得することにもつながっていく。まさに自立をいかに手助けするかということだろう。

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