塾講師が直伝する4つの「生徒のモチベーション管理術」の具体例とは? 子どもの学習効果を高める質問や声かけを解説
塾講師の生徒のモチベーション管理術
①質問の持つ力を活用する
ところで、次の漢字を読めるでしょうか?
「態と」
「くま(と)」ではありませんよ(笑)。「態度」の「態」の字です。ほとんどの人は読めないと思いますが、意味は幼稚園児でもわかる簡単な言葉です。そう言われると、ますます読み方が気になってくるのではないでしょうか。これが、質問の持つ力です。人は、質問されるとその答えを考えずにはいられないものです。だから生徒の学びたい気持ちを引き出すのがうまい塾講師は、授業中、多くの質問を生徒に投げかけます。そして、答えはできるだけ生徒に考えさせるのです。
なぜ、答えを言わないのでしょうか? それは、答えを言った途端に、生徒は関心を失うからです。「ドーパミン」という多幸感を伝える神経伝達物質の名前は聞いたことがあるかと思います。ドーパミンは何かを手に入れたときではなく、今にも手に入りそうなときに最も脳内に分泌されます。このドーパミンの働きによって、「知りたい」という欲求は、「わかりそうでわからない、でも、何とかわかるかもしれない」というときにこそ高まります。そこで、わかりそうでわからない質問を多く投げかけて、答えは態(わざ)と言わない。それが子どもの学びへのモチベーション維持につながるのです。
②さまざまな角度からメリットを伝える
勉強を避ける子も、勉強をしないよりしたほうがよいことは理解しています。でも、なかなか行動に移せないのです。その原因の1つに、勉強から得られるメリットを具体的にイメージできていないことが挙げられます。
一方で大人は、これまでの人生経験を通じて勉強で得られるメリットを実感しています。そこで、子どもには勉強をすることでどんなメリットがあるのかを具体的に伝えてあげましょう。将来選択できる仕事の幅が増える、進学先の選択肢が増えるなど、よく言われる漠然としたメリットだけではなく、子どもたちが考えてもみなかったメリットを伝えるのです。
例えば、勉強することで、今やっているゲームやアニメをもっと深く理解して楽しめるようになるとか、ただ動画を見て楽しむだけでなく、勉強して多くの視聴者に見てもらえる発信者になればそれを仕事にもできるよ、などと伝えてみてはどうでしょうか。
もちろんもっと具体的に、「この解き方を使えばこんな問題がこんな簡単に解けるよ」という即効性のあるメリットや、「次回のテストで総合点が20点上がれば、偏差値が5上がって、目指せる学校がこれだけ増える」という短期的な視野のメリットを併せて伝えていくことも必要です。さまざまな角度からメリットを伝え続けることが、子どものモチベーションにつながります。
モチベーションを引き出す声かけ
③本人も気づいていない点を認める
子どものモチベーションを引き出すには声かけも大事です。例えば、その子自身も気づいていない美点を見つけて、言葉にして認めてあげると、子どもはがぜんやる気を出すものです。
私はよく、生徒と1対1になったときに、「この間の実力テストで、大問4の最後の問題を正解できたのはクラスで○○(生徒の名前)だけだよ。ああいう問題は、普段から深く考えていないと解けないんだよな。すごいね」というような声かけをします。そのうえで、「でも、できている人が多い大問1の基本問題でミスが多かったから、結局平均点くらいになっている。もったいないな……」などと言うと、その生徒は、次回のテストで基本問題を失点しないように勉強します。