成長するのが楽しいからやる!子どもが自己調整で「自立して学ぶ」学校の仕掛け 何がどう違う?オルタナティブスクールの学び

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ヒロックでは、子どもが主役となって「育ち」や「学び」を主体的に勝ち取る、子どもの福利、いわゆるウェルビーイングを広げていく学校を目指しているという。

現在の学習指導要領でも、主体的・対話的で深い学びによって、子どもたちが自分で未来・社会を切り開いていくための資質・能力を育んでいくことを重要な指針として位置づけている。だが、授業以外の業務が多かったり、教育課程の編成で制約があるなど、必ずしも子どもたちの成長と向き合えるわけではないということなのだろう。

とはいえ、学校や学年で取り扱わなければならない内容・指導を定めた学習指導要領はまったく意識していないのだろうか。

「本来、学習指導要領は発達における目安のはず。なのに『この内容を○年生より前にやると頭がいい、遅くやると頭がよくない』といった誤解を生み出してしまうことも。学習指導要領や学習の学年配当が子どもに見えてしまうと、『やらなければいけないもの』になってしまう。僕らは意識しますが、子どもには見えなくてもよいと思っています」(蓑手氏)

一人ひとりへのこまやかな見取りで情報を蓄積

教科別授業を行わないことについて、五木田氏は「決して公立校や私立校を批判しているわけではない」と前置きをしたうえでこう説明する。

「『学習指導要領をやらなくて大丈夫か?』と疑問を持つ方がいるのも理解できます。ただ、『授業で教えたからといって学習者全員がその場で身に付くものなのか?』という前提が抜けているように思います。とくに今の学校は、やるべきことが過積載の状態。ヒロックのカリキュラムデザインは、その子のことを理解したうえで必要なことを必要なタイミングでやれたほうが学習効果も高いですし、何より『学びは楽しい』と感じられると考えました。『教えれば身に付く』という前提は『やらないからできない、だからやれ』といった歪んだ価値観を生んでしまう気がします。『一人ひとりペースも学び方も違うのが自然』という前提で学びの場をつくったほうが子どもの豊かな育みを支えられると考えました」

「思考と言語」の時間。集まって話を聞いた後、互いの文章を読んでフィードバックをもらう

現在は、蓑手氏と五木田氏という2人のシェルパに対し、Co-learnerは20人と公立小の3倍以上の手厚さだ。一人ひとりの子どもに寄り添うことが十分に可能な一方で、「探究の時間」などでは異年齢の子たちが一緒に学ばなければならない。それぞれの理解度に問題はないのだろうか。

「大事にしているのは難易度調整です。先日、東日本大震災から12年ということで、災害安全も兼ねてみんなに地震のメカニズムの話をしたのですが、3年生に合わせると1年生は疲れてしまいます。そこでいちばん知ってほしいこと、面白いことだけを抽出して話しました。つい教師はしゃべりたくなっちゃうと思うのですが、そこはぐっと我慢。興味を持った子は自分で調べますから。こちら側が適切に認知負荷を調整していくことが大切だと思っています」(蓑手氏)

そのために気をつけていることがあると五木田氏が続く。

「一人ひとり違いますから、やはり普段の見取りが大切です。自由進度学習のとき、誰が何をやっていて、何ができないのか、どこでどのくらい時間がかかっているのか、どんな言葉に引っかかっているのか、どのくらい集中しているのか……。一人ひとりの子どもを全体的に見て、つかむようにしています。その情報量があるから、全員に話すときでも、『ここを話す』ということが見えるのです」

これは、いかに一人ひとりを見る時間と材料を得るかということだ。全員を集めて話す一斉授業のような時間を少なくしているのも、子どもたちへの声かけの時間が少なくなるから。それぞれを深く知るためのツールとして、ICTも大いに役立っているという。

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