「令和」の生徒会は学校内民主主義を実現できるか?「脱・お手伝い」で自ら考えて 公立校、約1.7万署名で文化祭を開放した事例も
また最近の傾向として、「学校間の生徒会交流も活発になってきている」と荒井氏は語る。コロナ禍以前はリアルな交流が重視されていたが、ポストコロナに入ってからは「オンラインを含めてさらに幅広い連携・コミュニケーションを取る傾向が顕著になってきた印象がある」ようだ。
例えば、東京都の多摩地域を中心とする約25校が参加する「多摩生徒会協議会」では、約2カ月に1回のペースで各校の生徒会役員を中心に意見交換会を実施している。また、東京都の私立・桐朋学園の生徒会では、他校の生徒会とZoomなどを用いて意見交換を行う「二校間交流」を実施。これまでに意見交換を行った学校は約20校に上り、二校間交流で築いた関係を発展させ、複数の学校の生徒会メンバーが一堂に会して話し合う交流会も実施している。
教育委員会ありきの公立校、予算1000万円超の私立校
ここで気になるのが、公立校と私立校による生徒会のあり方の違いだ。猪股氏は次のように述べる。
「まず大きな違いが、予算規模です。私立校は生徒会の予算が1000万円近くになることもあり、生徒がその差配を考える経験ができます。校則改正に関しても、公立校は原則として各都道府県の教育委員会の判断を仰ぐ必要がありますが、私立校は学校単位で認められれば改正できます。また、私立校の教員には異動がないため、年度をまたいでも活動内容を引き継ぎやすい環境にあります。生徒側も、とくに中高一貫校は4~5年にわたり役員を務める人もいるので、豊富な経験を糧に質の高い活動につなげやすいのです。一方で、公立校は3年経つとすべての生徒が卒業してしまうほか、担当教員も異動によって頻繁に変わるなど、ノウハウの継承が課題になっています」
不利な条件が多いように思える公立校の生徒会だが、何もできないわけではない。2022年5月、埼玉県立春日部高等学校の生徒会は、新型コロナ感染防止対策のため保護者などまでにとどめていた文化祭の一般開放を求めて、陳情書とオンラインサイトで集めた約1万7000筆の署名を埼玉県教育委員会に提出した。その後、埼玉県教育委員会は22年度版の「新型コロナウイルス感染防止対策ガイドライン」を緩和し、文化祭の一般公開を認めた。同年6月に開催された春日部高校の文化祭は、ガイドラインの緩和を受けて、事前予約制かつ全体の入場者数を制限したうえで一般公開されたという。

生徒会活動支援協会理事
上智大学総合人間科学部教育学科在学。高校在学時(埼玉県立春日部高等学校)は、生徒会会計、文化祭実行委員会会計局・ホームページ局長として活動。第8回全国高校生徒会大会経理部長も務めた
(写真:本人提供)
春日部高校の生徒会OBで、現在は大学で教育学を専攻しながら生徒会活動支援協会の理事を務める川名悟史氏は、後輩の活動を見てこう語る。
「公立校での改革は、やはり教育委員会の判断を仰がなければいけない点が壁となります。しかし裏を返せば、どこか1校のアクションをきっかけに教育委員会の判断が変われば、その影響が県内のほかの公立校にも伝播するということでもあります。現在はSNSなどを活用して学校間の連携もしやすいので、横のつながりを生かしながら1校も取りこぼさない形で改革ができる可能性がある。これは公立校ならではの強みでしょう」