「令和」の生徒会は学校内民主主義を実現できるか?「脱・お手伝い」で自ら考えて 公立校、約1.7万署名で文化祭を開放した事例も
ブラック校則については、近年、あまりに行き過ぎたものを見直す動きも広まっている。一例として、福岡市教育委員会は2023年2月1日の会見で、男女別の制服規定や髪型のツーブロックやポニーテールの禁止、下着の色の指定といった5項目の校則を、23年度より市内の公立中学校で撤廃すると発表した。実現に当たり、福岡市は21年より各学校に教師・生徒・保護者などからなる「校則検討委員会」を設置して、校則の見直しについて検討を重ねていた。こうしたプロセスを踏まえ、福岡市教育委員会は会見の場で、生徒自らが作ったルールを自分たちで守る「主権者教育」の重要性にも言及している。

生徒会活動支援協会理事
東京大学大学院教育学研究科在学。高校在学時(私立桐朋高等学校)は総務委員長(生徒会長)として活動、生徒会大会(首都圏)を立ち上げ、首都圏高等学校生徒会連盟代表、生徒シンポジウム実行委員なども務めた
(写真:本人提供)
生徒が、学校内での話し合いや生徒会活動を通じ「主権者教育」や「学校内民主主義」を経験するメリットについて、生徒会活動支援協会理事の猪股大輝氏はこう話す。
「日本の学校では長きにわたって『ルールは守るもの』という指導がなされてきました。一方で、主権者教育や学校内民主主義が実践される場では、『自分たちでルールを作る』という経験ができます。ルール作りに主体的に関われば、『ここは自分の学校だ』と当事者意識が生まれ、校内自治に積極的に参加したいという意識の変化も期待できます。また、自分が動けばルールを変えることができ、自分たちの手でより過ごしやすい社会をつくれるのだ、という成功体験は政治参加への意欲を高めることにもつながります」
生徒会が教員の「お手伝い屋」では意味がない
「ブラック校則」や制服などに関する「ジェンダー平等」の議論が活発になったことを受け、最近では生徒会が中心となり校則改正を目指す学校も出てきた。しかし猪股氏は、「校則改正のプロセスが真に民主的なものであるかは、しっかり検証する必要があります」と指摘する。
「学校によっては、教員によってあらかじめ『このような方向性に校則を改正する』と決められており、生徒会はその“お手伝い屋”として使われるケースもあります。校則改正が実現しても、これでは生徒の意見が反映されていません。学校内民主主義を実行するなら、校則改正の方向性を決める段階からボトムアップで議論される仕組みづくりが不可欠です。生徒自身が『この学校をどうしていきたいか』『そのために校則をどう変える必要があるか』と十分に議論する必要があります」
実際に、校則改正の仕組みづくりそのものを生徒会が主導する例もある。静岡県立富士高等学校は、ある生徒から校則改正が提案された際は、生徒総会で全生徒の3分の2以上の賛同を得れば学校側に提起するというルールを新設した。これにより、生徒全員が校則改正のプロセスに関わるほか、どのような提案をどれくらいの生徒が支持しているのかも明確になる。
全校アンケートはQRコードで、他校との交流も活発
全校生徒の意見を集める手段として、デジタルツールの活用が進んでいることも令和の生徒会の特色だ。
「かつては目安箱を置いたり、生徒全員に紙のアンケートを配布するなどの手段しかありませんでした。しかし現在は、GoogleフォームなどでWebアンケートを作成して、URLやQRコードから簡単に配布・回答してもらうことができます。デジタルツールとしては、Google Classroom以外にClassi、Slackなどを活用しているようです」(猪股氏)