少子高齢化が進む国では、親からの相続・贈与を通じて取得した資産が子の保有資産に占める割合は高まっていくと予想される。資産格差の固定化を防ぐためには、これらの資産移転への課税が重要となる。2023年度税制改正に向けた議論でも相続・贈与への課税のあり方が論点の1つとなったことは、記憶に新しい。
この問題については、格差など公平性に関する配慮のほかに、資産移転を行う親とそれを受け取る子の意思決定を歪めない、という効率性(中立性)への配慮も必要だ。相続・贈与への課税を強化すれば、親は資産蓄積の意欲を低下させ、教育投資などの現物贈与を増やすだろう。一方、子も税引き後の受取額が減少するので、貯蓄や労働の意思決定が影響を受ける。
親の意思決定が課税で変化するか否かは、資産移転の動機による。例えば、子に資産を移転する意思がない親は原則として保有資産を自分で使い切ろうとするため、課税による行動の変化はない。一方、親が子への資産移転を望むなら、課税は親の意思決定を変化させる。
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