いじめの重大事態や事故の危機対応、「できる学校」と「間違う学校」の決定的差 スピード命、警察など専門家が入る体制も急務
文科省は、全国のいじめの重大事態について国が状況を把握して助言を強化するなどの方針も示しているが、石川氏は次のように考えている。
「第三者委員会の設置の前に、まずはタスクフォースで迅速に調査や収束が図れるような体制も必要ではないでしょうか。子どもに関する危機対応は、とにかくスピードが命。そのためにも、社会全体の問題として捉えることが不可欠だと思います。例えば、旭川市内の公園で死亡していた中学2年生のいじめ事案では、教頭、校長、教育長、教育委員会だけでなく、警察や地元メディアなどにも問題がありました。子どもの危機については、学校だけでなく地域の大人にも責任があることを私たちはもっと自覚すべきだと思います」
学校では、いじめに限らず、部活動や体育の時間に起きる事故、アレルギーに関する事故など、子どもの命に直結する事案が日々発生している。
例えば東京都調布市では、12年に給食時の誤食から、小学5年生が食物アレルギーのショック症状で亡くなった。調布市はその後、再発防止のため統一ルールを策定。普通食と除去食がわかるようトレーを色分けするほか、アレルギー対応の献立表には、栄養士と管理職、保護者の確認欄を設けるなどの「調布モデル」は全国にも広がっている。当時、調布市で教育委員を務めていた石川氏はこう説明する。
「実はこの事故以前にも誤食はあったのですが、学校給食を担当する課で『命に別状はないから報告の必要はない』と判断され、事故情報が止まっていたことが後からわかりました。小さくとも事故情報を共有していれば、教職員が適切な対応ができるよう十分な対策が取れていたかもしれません。ガバナンスを利かせるためにも、もっと学校にも行政にも専門家が入る体制が必要です」
とくに学校現場は、「学校内ですべての問題を解決しようと考えないことが大切」だと石川氏は話す。学校には、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門職が配置されているが、まだまだ専門家が足りていないと石川氏は考えている。
「経験豊富な教員OBや警察OB、弁護士らが学校に関われば現場は大いに助かります。家庭や社会の変化のシワ寄せが学校に押し寄せていることを地域や社会が理解し、学校をサポートしていく体制づくりが欠かせないと考えています。学校も、何でも『子どもたちのために』とならず、減らせる活動は減らして余裕を持つことが大切でしょう。保護者に対しても『何でも学校にご相談ください』ではなく、学校と家庭の役割について啓発し、『家庭での教育には責任をお持ちください。問題が起きた際はご協力ください』と呼びかける視点も必要ではないでしょうか」
(文:國貞文隆、注記のない写真:buritora/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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