新任・若手教員「メンタルヘルスの悩み」誰に相談?校長はカウンセリング講習を 保護者は「お客様」ではない、入学式から伝えて

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「1つ目に有効なのは、校長先生がカウンセリングを学ぶこと。小・中学校の教員は、校長先生に厚い信頼を寄せる傾向にあります。異業種からしたら不思議なほどですが、お父さん・お母さんのような存在だったりもするのです。その分、つらいときに助けてもらえないと、まるで裏切られたようなショックを受けてしまう。だからこそ、管理職には心理学やカウンセリングの専門知識を学んでほしい。座ってデータを見るだけのメンタルヘルス研修ではなく、実践を交えたカウンセリング実技の習得が理想です」

少しでも教員の離職率が下がるなら費用対効果は大きいはず。メンタルヘルスが不調になると、突然デスクの上が散らかるようになったり、提出物の遅れやミスが目立つようになる。管理職はそこで怒るのではなく、「『何かあった?』と声をかけられるようになってほしい」と諸富氏は語る。ほかにも、穏やかだった先生が急にキレやすくなるなど、「らしくない」先生がいたら気にかけたいところだ。

保護者は「お客様」ではない、教員は「パートナー」

「2つ目に、保護者と教員が『対等な立場・関係性』であることです。教員の若年化に対して保護者の年齢層は上がっていますから、保護者も何かと教員の言動が目につくのでしょう。しかし本来、学校は『サービス業』ではないし、保護者も『お客様』ではありません」

最近では学校や教員に対する評価アンケートが行われるなど、保護者が学校を「監視し評価する」構図となりがち。しかし子どもを教育するうえでは、教員はその権利と責任を持つ保護者のパートナーだ。保護者にはもっと広い目で学校を見て支える姿勢が必要だが、「校長や管理職が、このスタンスを入学時から保護者に伝え続けるべき」と諸富氏は話す。

「教員不足や若年化、教員採用試験の倍率低下はもはや周知の事実です。文句を言っている場合ではないんですよ。本当に教員がいなくなったら、授業もまともに受けられず、それこそ保護者が望む教育とはかけ離れていきます。みんなで支えてあげないと、その害は自分の子どもにはね返ってきますよ」

一方で、そもそも教員の仕事のあり方を見直し、勤務時間と仕事の総量を減らさなければ根本解決にはならない。

「教員の仕事の本当の魅力や喜びは、やはり数年続けてみないとわからないもの。志を持って教員になった新任の先生が、1年と経たずに辞めてしまうのはもったいない。教員の給与を上げる、仕事の総量を減らす、そしてマスコミは過度にネガティブな報道を減らす、など、何とか続けられる環境に変えなければ」と諸富氏は言う。前例踏襲と言われる教育現場で、変化が急がれる。

(文:中原絵里子、 注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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