新任・若手教員「メンタルヘルスの悩み」誰に相談?校長はカウンセリング講習を 保護者は「お客様」ではない、入学式から伝えて
「必要なのは『弱みを見せられる仲間』を見つけることです。しかし悩んでいる自分を認めることに抵抗を感じる人もいます。若い先生ほど自信がないので、弱みを出すと余計に自己肯定感が下がる可能性もあります。そこでお勧めなのが、宿泊型の『研修・研究会』です。自己研鑽の場であれば堂々と参加できて、『自分だけじゃない』と思えたり、自校の状況を客観的に見ることができます。あるいは、大学の同級生や初任者研修で一緒だった人などと時折会って語り合うのもよいでしょう。仲間だと思える人とのつながりを大切にすることです。非難されないコミュニティーを見つけておくことも有益です」
「悩める教師を支える会」では、ほかの参加者が考えたアイデアに救われることもある。例えば、ある教頭は校長のパワハラで追い詰められていた。しかし、管理職は任期終了まで異動ができない。そこで参加者の助言を受け、自ら教育委員会に頼んで降格にしてもらうことで異動を実現させた。また、県の教育に対する文化が自分と合わずに悩んでいた教員は、情報をもらって自分の価値観に近い県の採用試験を受け直した。いずれも、教員同士だからこそできたアドバイスだ。
「『つらいなら辞めたら?』ではなく、なんとか教員を続ける方法を模索するのが教員同士ならではだと思います。学校のしゃくし定規な異動システムはさらに教師を追い詰めるだけ。いじめられている生徒の転校を認めないのと同じです。そんな状況でどうにか“抜け道”を探すのです」
30代教員やベテラン教員が若手・新任教員にできること
もちろん最善なのは、同じ学校の同僚と支え合う環境があること。しかし、コロナ禍で飲み会などの機会が減り、若手同士で悩みを吐き出せる場も失われた。諸富氏は「これは苦しい状況」と危惧する。「やはり、40代50代と若い先生との間にはギャップがあります。そこで、30代半ばの先生層が『若手を守ってバックアップしよう』という意識を持ってくれるとうまくいきやすい。若い先生方はあまり自分から相談には来ないので、先輩側から歩み寄る必要があります」
諸富氏によれば、「教員を辞めたい」と思う人の傾向が、昔と今とで変わってきたそうだ。昔は限界まで我慢して力尽きる人がほとんどだったが、最近では初年度で辞める人が目立つ。その背景に、教員採用試験の倍率が下がったこともあって、私生活を大切にしたいと思う人も教員になっている点が挙げられる。
「ベテランの先生から見ると、『根性がない』と感じるのかもしれません。しかし、そもそも現代の価値観は、仕事一辺倒で身を粉にして働くことをよく思いません。歯を食いしばらないとこなせない仕事など、選ばなくて当然なのです。若い人のそうした気持ちは至って健全。そこに根性を求めるのではなく、『それなりに頑張れば続けられる仕事』に変えていくのがあるべき姿です」
校長はカウンセリングの講習を受けて
ギリギリまで自分を追い詰めてしまう教員ほど多忙で、サポートを受ける時間もなければ、疲れ切っていてその元気すらない。教員採用試験の倍率が下がり続け、「教員はブラック」という認識も広がる中、このままでは教員のなり手がいなくなり教育の質を保てなくなるかもしれない。手だてはあるのだろうか。