「法人SMBC日興証券に罰金7億円、追徴金44億円を科す」。2月13日、東京地方裁判所の104号法廷で相場操縦事件の有罪判決が下った。
だが、これで大手証券会社をめぐる前代未聞の相場操縦事件が終わったわけではない。今なお容疑を否認している元役員らがいるからだ。「取引が違法だという認識はいっさいなかった。自分たちが逮捕・起訴された理由もまったくわからない」――。東洋経済の独占インタビュー(元エクイティ本部本部長のトレボー・ヒル氏、元エクイティ本部副本部長のアレクサンドル・アヴァキャンツ氏)に答えたSMBC日興証券の元役員たちは、異口同音にそう語った。
東京地方検察庁特捜部は、2022年春に金融商品取引法違反(安定操作)などの容疑で、SMBC日興証券の元役員など6人と法人としてのSMBC日興証券を起訴。SMBC日興と杉野輝也被告(57)らの強い要望により、公判は起訴容疑を認めたグループと、否認しているグループに分けられた。
容疑について争わず、量刑のみが争点となっている杉野被告とSMBC日興証券の裁判は2022年10月から始まり、2月13日に有罪判決が出た。一方、容疑を認めなかった残り5人の被告の公判は、起訴から10カ月以上経っても開始のメドすら立っていない。裁判の開始前に争点を整理する公判前整理手続きが採用され、検察やそれぞれの被告の弁護士が非公開で準備を進めている。
「安定操作」の定義が最大の焦点に
容疑を否認している残る5人の裁判で最大の焦点となるのは、SMBC日興が行った取引が「安定操作」に当たるのかどうかだ。
今回の事件で法人としてのSMBC日興と6人の被告は、東京証券取引所に上場している10の銘柄について「安定操作」をしたとして、それぞれ起訴された。
安定操作取引とは、金融商品取引法で規制されている相場操縦の一種で、「相場をくぎ付けし、固定し、又は安定させる目的をもつて、一連の有価証券売買等(中略)をしてはならない」(金商法159条3項)とされている。だが、どういう取引が安定操作に当たるのか、具体的な条文や規定が存在しない。
金融商品取引法に詳しい専修大学の松岡啓祐教授は「これまでに安定操作取引単体で摘発された事例はほとんどない。どういう取引が安定操作に当たるのかという判例の蓄積もなく、今回のような大事件で使われて正直驚いた」と語る。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら