Netflix、切り札の「広告プラン」で露呈した難題 創業者がCEO退任、新経営陣は再成長を導けるか
昨秋に導入して話題を呼んだ低価格の広告付きプランだが、業界からは「中途半端」といった声も。軌道に乗せるには複数の課題が横たわる。
「私の役割を完全に引き継ぐ時が来た。2023年は、新たなモメンタムと、成長を再び加速させるための明確な道筋をもってスタートする」
アメリカの動画配信大手、ネットフリックスの創業者であるリード・ヘイスティングス氏は、自身の退任発表と併せてブログにそう記した。
ネットフリックスは1月19日(現地時間)、ヘイスティングス氏がCEOを退き、会長に就いたと発表した。同社は2020年7月にテッド・サランドス氏を共同CEOに昇格させ、引き継ぎの準備を進めてきた。ヘイスティングス氏の退任に伴い、これまでCOOを務めてきたグレッグ・ピーターズ氏が新たに共同CEOに就任した。
同日に発表した2022年10~12月期決算は、会員数が会社予想の450万人増(9月末比)を大きく上回る、766万人増の2億3075万人となった。2022年前半には2四半期連続での会員減少で先行きが危ぶまれたが、『ウェンズデー』や『ハリー&メーガン』など10~12月に公開したコンテンツの成功が、会員のつなぎ留めや新規獲得に貢献したという。
「広告主への返金」報道を否定せず
ただ2022年通期で見ると、売上高316億1555万ドル(前期比6.5%増)、営業利益56億3283万ドル(同9.1%減)と、制作費などがかさみ増収減益だった。2桁成長を続けてきた売上高も、ドル高の影響で伸び悩む。株価は足元で回復基調にあるものの、いまだ2021年のピーク時の半値ほどの水準で推移している。
成長を再加速させる切り札に掲げるのが、2022年11月に導入した広告付きプランだ。動画の視聴中に広告を流す代わりに従来のプランよりも安価に設定し、会員増や広告収入の拡大につなげる狙いがある。同社は決算と同時に公表した「株主への手紙」の中で、「広告付きプランは加入者増と顧客エンゲージメントの向上につながった。初期の結果に満足している」とした。
しかし2022年末、一部の現地メディアは、ネットフリックスが広告主に保証した最低視聴数を達成できず、広告主への返金を認めていると報じた。決算発表と同日に開かれた投資家向けビデオ会議においても質問に上がり、返金の事実について経営陣は否定しなかった。
日本でネットフリックスの広告枠の買い付けを行っているGLASSの齋藤拓真氏によれば「日本では今のところ、返金の事例は聞いていない。ただ、2022年12月ごろに最低出稿金額を150万円から360万円に変更すると通知され、単価の高い広告主に絞って販売し始めている」という。
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