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斎藤幸平氏による新たな「資本論」分析は有用だ 唯物史観ではない「物質代謝」で読み解く

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4年目に突入したコロナ禍と、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻の長期化が、世界経済にも大きな影響を与えている。エネルギーや穀物の価格高騰による物価高に日本も襲われている。

岸田文雄政権は、防衛費の大幅増強を増税で賄おうとしているようだ。法人税増税を防衛費に充当するという案も一部でささやかれているが、それが実現すると企業は労働者の賃上げを躊躇するであろう。とくに身分的に安定せず、低賃金状態の非正規労働者が置かれた状況は一層厳しくなる。格差拡大という枠に収まらない、十分な食事さえ取れない絶対的貧困の問題もすでに生じている。

解決のカギは『資本論』に

このような現状に対して、経済学者は有効な処方箋を打ち出すことができない。その原因の1つが、官庁、論壇、大学、シンクタンクで活躍しているエコノミストの圧倒的大多数が主流派経済学しか学んでおらず、マルクス経済学、とりわけマルクスの主著である『資本論』に関する知識を欠いていることだと筆者は考えている。

筆者は、1979年に同志社大学神学部に入学し85年に同大学院神学研究科博士前期課程を修了した。当時、同志社大学の経済学部と商学部では、マルクス経済学と近代経済学(主流派経済学)の講座の双方が開講されていた。

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