「全国校則一覧」サイトつくる高校生が「校則は社会課題の教科書」と語る理由 1400以上の公立高等学校の校則をウェブで公開
こうした中、新たな生徒指導提要では、校則のホームページでの公開や、見直しの手続きを定めるのが望ましいこと、少数派の意見も尊重することの必要性など、児童生徒の権利が重視される内容が盛り込まれた。
神谷さんも、「校則を変える校則」が必要だと語る。ただ、単純に校則がなくなればいいとは思っていない。社会に法律や条例があるように学校にもルールは必要だと考えており、「校則を変えたいならば、学校はもちろん、保護者や地域とも話し合い、変えていくことが大切。そのためにも、『校則を変える校則』が必要」だと強調する。
「生徒指導提要については僕も自治体とお話をすることがありますが、具体的な取り組みは検討段階にあり、現場への浸透には至っていないと思います。こうした現状からも、全国校則一覧を、校則を変える1つの材料にしてもらえればと思っています」
今後は県ごとの調査結果を順次公開するほか、関東、東日本、全国など、エリアごとの比較分析も行っていきたいという。

(資料:神谷さん提供)
全国校則一覧の活動を継続するため「NPO法人化」へ
不登校やいじめの要因の1つが厳しい校則にあると指摘する専門家や、校則ではないものの学校に存在する細かな決まり事や「学校(学級)スタンダード」が主体性を奪っていると警鐘を鳴らす識者もいる。
神谷さんも「ウラ校則のようなものがあることはとても問題だ」と捉えており、全国3300校超の公立高校の校則を網羅したあとは、中学校の校則や小学校のルールの一覧化なども検討していくという。
神谷さんは現在、校則一覧化を継続的に行うため、運営団体のNPO法人化を進めている。審査が通れば23年3月ごろには実現できる見通しだ。
神谷さんの活動を、「進学のための実績づくりではないか」と見る人もいる。今は静かに見守ってくれている両親も、当初は「なぜそんなことをするのか」とあまり好意的ではなかった。それでも校則の一覧化を進めてきたのはなぜか。
「校則に興味があるということもありますが、活動が純粋に楽しいんです。サイトを公開してからは、見てくれる人の数が増えていますし、高校生や教員の方から『校則を変える材料として使いたい』『授業で活用したい』というお問い合わせもいただき、とてもうれしいです」
最後に、神谷さんに活動を通じて得たこと、そして、将来の夢や目標について聞いてみた。
「自分ではできないと思うことでも、やってみれば意外とできるという経験をしたことが大きいですね。周囲の目を気にしたり、難しいと思ったりしても、やってみると応援してくれる人もいる。おかげで何事も楽観視できるようになりました。今後は、大学で教育学や社会学を勉強してみたいです。高校の探究学習を通じてオルタナティブスクールの運営に興味を持ち、現在は多様な教育を探究テーマとして少年院などにも足を運んでいます。ただ、将来については夢や目標があまりないタイプなんです。その日その日を全力で楽しみながら生きていきたいと思っています」
(文:國貞文隆、編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:Fast&Slow/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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