「汚染」が途上国に移転、環境規制の不都合な帰結 規制対象の生産工程が移転先で健康被害を起こす

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煙突から煙を出す工場
(写真:ake1150sb / PIXTA)

環境問題への懸念の高まりから、近年、先進国では温室効果ガスや汚染物質などの排出に厳しい環境規制が適用されている。一方、開発途上国で同じ水準の規制が実行されるケースは少ない。この状況では、豊かな先進国が規制を強化しても、環境汚染を引き起こす生産工程が貧しい途上国に移転されるだけなのではないか。

環境汚染の移転に関する問題は「汚染逃避地仮説」と呼ばれ、以前から多くの研究成果が蓄積されてきた。また、先進国からの汚染産業移転が途上国で健康被害をもたらしている可能性はメディアでも指摘されていた。しかし、先進国と途上国の両方のデータを用いて、先進国での規制強化が途上国に与える影響を追跡した研究は、存在しなかった。

そこで筆者は、米タフツ大学の田中伸介助教授、米コロンビア大学のエリック・ヴァーフーゲン教授と共同で行った研究で、米国とメキシコのバッテリー(蓄電池)リサイクル産業をめぐる動向に着目。米国での環境規制強化がメキシコにどのように影響したかを分析し、先進国における規制強化が汚染物質を排出する生産を途上国に移転させたことを、両国のデータを用いて実証した。さらに、途上国では移転により健康被害も起きていたという結果が得られた。

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