「マンション漏水事故」の95%は給湯管ピンホール 保険加入拒絶、住人同士の大喧嘩にスラム化も

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前出の日本リニューアルの工藤社長によれば、マンションによって差はあるものの、肌感覚では築20年超で全戸の10%、築30年を超えてくると全戸の15%から30%、築40年超だと全戸のほぼ50%超の確率でピンホール事故は起きていると言います。

日本リニューアルは給湯管のピンホールを埋めるライニング技術をもっていて、2015年以降の7年間で、工事実績は6900戸(2022年8月時点)に達し、1年先まで受注が決まっている盛況ぶりです。

多発するピンホール事故の公式の統計がない

にもかかわらず、国土交通省も、マンション管理組合の全国組織も、まったくピンホール事故の統計をもっていません。

2020年3月に、ピンホール事故のリスクに関する単発記事を、あるインターネット媒体で執筆したところ、おびただしい数の批判コメントがつきました。「例外的な事故をさも大量に発生しているかのような書き方をして必要以上に不安を煽っている」「取材もせず字数稼ぎのためにウソの記事を書いて恥ずかしくないのか」といった類の書き込みです。ピンホール事故について世間の認知が広がることが不利益と考える人がいるのかもしれません。

大手損保は2019年10月に、自然災害とマンションの漏水事故の急増を理由に、保険料体系を大幅に見直しています。それまでは導入していなかった、保険事故の発生率を保険料に反映させる制度を導入したのです。

近年は事故の増加で保険金の請求機会が急増し、保険更新時に保険会社から提示される保険料がとんでもない額にハネ上がったことで、この問題に気づく管理組合が増えてきています。

それでもいまだに全国レベルで統計がとれる体制が整う状況にはありません。マンション管理組合や区分所有者には、とても不利益な状況になっています。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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