ノーベル賞「絶滅した人類」を研究する納得理由 受け継いだ遺伝子が新型コロナ重症化にも影響
今年のノーベル生理学・医学賞には「人類の進化」の研究者が選ばれた。絶滅したネアンデルタール人のDNAを分析することが、現代のわれわれにとってどのようなメリットがあるのか。
今年のノーベル生理学・医学賞には、「絶滅したヒト科のゲノムと人類の進化に関する発見」で功績があったとして、ドイツの研究機関「マックス・プランク進化人類学研究所」の所長で、2020年から沖縄科学技術大学院大学(OIST)の非常勤の教授も務めるスバンテ・ペーボ博士が選ばれた。
受賞決定を受けてOISTが10月4日に開いた会見で、絶滅した人類を研究することの今日的意義を問われたペーボ博士は、「(新型コロナウイルスなどへの)対処法を明らかにするのに役立つ」と述べた。ペーボ博士の研究とはいったいどのようなものなのか。
かつてヨーロッパなどで暮らしていたものの、種としてはおよそ4万年前に絶滅した「ネアンデルタール人」がいる。ペーボ博士は、このネアンデルタール人のDNA配列やゲノムの解読に成功した。ゲノムとは、生物やウイルスのすべての遺伝情報、いわば設計図を指す。
ネアンデルタール人の免疫システムを継承
また、ロシアのシベリア南部の山間部にあるデニソワ洞窟で発見された指の骨のDNAから、かつてアジアなどで暮らしていたものの、種としては絶滅してしまい、それまでは存在すら知られていなかった「デニソワ人」の存在を特定することができた。
このようなDNAの分析のおかげで、どんな人類が暮らしていたのかが明らかとなってきたのである。
そのうえで、種としては絶滅してしまったネアンデルタール人やデニソワ人も、遺伝子としてはホモ・サピエンス、つまり、現代の私たちが一部を受け継いでいることを明らかとした。しかも、そうしたネアンデルタール人やデニソワ人から受け継いだ遺伝子は、現代人にとっても重要な意味を持つ。
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