奨学金サイト「ガクシー」会員増、背景に「放置されてきた2つの課題」 知られざる情報格差と業務非効率、DXで解消へ

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政府は修学支援の拡充も予定しており、今年9月にはその工程表が発表された。そこには24年度から高等教育の修学支援新制度の対象を中間所得層にも拡大するほか、「出世払い」できる奨学金制度の導入などが盛り込まれている。ただ、松原氏はこうした国の提言について、次のように評価する。

「教育費は無償化できるといいのですが、難しいのが日本の現状です。そんな中、こうした修学支援の拡充はすばらしい流れだと思いますし、国が音頭を取るのは大事なこと。しかし個人的には、子どもが多い世帯や理系の学生などに限られるなど細かな制限が付いており、実行してもごく一部しか恩恵を受けられないのではと懸念しています」

では、今後どのような支援が求められるだろうか。松原氏は奨学金を投資の一部だと捉えれば、いろいろな支援の仕組みが考えられるだろうと話す。

「海外では投資としての奨学金も増えていくと思いますが、日本では国民性を考えると大きな潮流にはならない気もします。そこで今、給付型奨学金の総量増を目指して考えているのが、ふるさと納税型の奨学金制度の創設です。米国では奨学金への出資や寄付が税額控除の対象となっているため、寄付をして誰かを助けたいと考える人たちが多い。米国ほどではありませんが、日本も一定の条件で税額控除の対象となる仕組みがあるので、私たちが奨学金の運営元になって米国のような機運をつくりたいと思っています。ガクシーには学生が集まっており、システムで手軽な仕組みをつくれる強みがあるので、『控除の恩恵を受けながら奨学金を実施したい』というニーズを掘り起こせると考えています」

同社は、今年の6月末に銀行系や教育出版社系のベンチャーキャピタルなどから総額約1億円の出資を受けることになり、10月1日からサービス名の「ガクシー」に社名を変更して新たなスタートを切っている。松原氏は、今後のどのように同社を成長させていこうと考えているのだろうか。

「日本の若者がお金の心配をまったくせずに自分のやりたいことができる、『諦めなくていい社会』にしていきたいと思っています。そのため、若者がお金や知識の流れを整理できるようなプラットフォームやツールをつくり出していきたい。ふるさと納税型の奨学金制度の創設もその一つですし、クラウドファンディングのような学生がやりたいことのためにお金を集められる仕組みをつくるのも一案です。将来的には、中国やインドにも進出していきたいと考えています」

(文:國貞文隆、写真:ガクシー提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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