中国「都市戸籍より農村戸籍は不利」、戸籍制度とも絡む根深い教育格差の実態 超大都市に「不動産購入できない」が大きく影響
2021年夏、筆者はそうした団体戸籍保有者のケース(両親ともに地方出身で、父親はある超大都市の大学准教授。自宅は賃貸。子どもが9月から小学校に入学するという家庭)を取材したことがある。その家族の場合、戸籍の問題で子どもを自分たちが住む地区の公立小学校に入学させることができないことから、私立小学校を受験した。父親によると、その学校の合否は試験や面接ではなく抽選で決まることになっており、その家庭では運よく抽選に当たったため子どもを教育レベルの高い私立小学校に入学させることができたと話してくれた。
そもそも、その家族が住む学区内にある公立小学校はレベルがあまり高くなかったが、自分たちは子どもをそこに入学させることさえできない立場(団体戸籍)であることから、「それしか選択肢がなかったが、結果的によかった」と父親は話していた。
だが、この取材をした直後、中国政府は不動産を持っていない団体戸籍保有者でも、子どもを超大都市の公立の学校に入学させられるようにするという大きな方針転換を発表したことがわかった。近年、筆者が取材したこの家族と似たようなケースが非常に増えており、不満が高まっていることから、政府はこのような決断をしたのではないかと、この家族は話していた。
かつて、超大都市に住む外来者といえば農民工などが多く、ホワイトカラーやエリート層は少なかったが、急激に経済発展した現在、大都市にはさまざまな職業の人が流入し、定住している。古い戸籍制度によって教育格差が広がることは社会不安や人々の不満につながるため、政府は改革を進めている。だが、人口が多い超大都市の場合、地元民の反対意見も根強く、教育格差が縮まるまでにはまだ時間がかかるのではないかと思われる。
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(注記のない写真:トマトム / PIXTA)
執筆:ジャーナリスト 中島 恵
東洋経済education × ICT編集部
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