今さら聞けない「メタ認知」、学びに向かう力を育む授業4つのコツとは? 忙しい教員の「効率的な学び」の実現にも役立つ

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「メタ認知」を活用した効果的な授業のコツとは?

──子どもたちが学力や学習意欲を高めていくために、教員はメタ認知を活用してどのように授業を行うとよいでしょうか。

自分のものの見方を絶対視せず、ほかの考え方ができないかを考えさせるという視点が重要です。具体的に4つのポイントをご紹介しましょう。

三宮 真智子(さんのみや・まちこ)
大阪大学名誉教授、鳴門教育大学名誉教授、学術博士(大阪大学)
専門は、認知心理学、教育心理学。コミュニケーションや思考・学習に関する実証研究、教育開発を行っている。主な著書に『メタ認知 あなたの頭はもっとよくなる』(中公新書ラクレ)、『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める 認知心理学が解き明かす効果的学習法』(北大路書房)、『誤解の心理学 コミュニケーションのメタ認知』(ナカニシヤ出版)など
(写真:本人提供)

1つ目は、お互いに教え合う「相互教授」を活用し、子どもたちの理解を確かなものにすること。わかったつもりでいても実際にはよくわかっていないことがよくあるので、自分の理解を確かめるよい機会になります。

2つ目は、「多面的な考え方」の習慣化。方法としては、自分で考えてから多様な考えに触れる機会をつくってあげると効果的です。実際、「IPE(Idea Post-Exposure)パラダイム」と名付けたトレーニングを用いた私の研究では、「これ以上は無理」というところまで考え尽くしてから他者のアイデアを聞くことが、多面的な原因推理力を伸ばすことがわかりました。例えば何かを考えさせるときは、子どもたちが考え抜いた後に、先生があらかじめ用意しておいた複数の考え方を提示してあげるなどが有効です。これは対面でもオンラインでも効果があります。

3つ目は、「討論」の場を通じて、ある主張に対する賛成・反対の根拠を吟味させること。私たちは自分の考えや信条に偏ったものの見方をする「マイサイドバイアス」に陥りがちで、そこから脱却するには自分と異なる意見を聞くことが役立ちます。また賛成・反対の立場は同じでも論拠まで同じとは限らないので、他者の意見がどのような論理に依拠しているのかを知ることも大切です。「自分の考え方を複眼的にしよう」というメタ認知的な目的を意識させてから討論に臨ませると、より効果的です。

4つ目は、「失敗事例」を分析させること。例えば「私はチョコとバニラのアイスを食べた」など2通りの意味に取れるような文や誤解を招きやすい発言などの例を提示し、どこに問題があるのか、どう改善すればよいのかを子どもたちに考えてもらう。説明力やコミュニケーション力を高めてくれる実践になるでしょう。

日頃から「メタ認知」を意識した声かけやサポートを

──メタ認知の力を育むため、教員は日頃からどのようなサポートをするとよいですか。

認知的側面から6つ、非認知的側面から3つほど要点があります。

認知的側面からいうと、1つ目は、メンタルブロックから子どもを解き放つ声かけを心がけること。「今さら勉強しても賢くなれない」と諦めている子がいるとしたら、人は勉強すれば賢くなれることを折に触れて伝えてあげる、ささいなことでも成長を感じられたら「ね! やればできるでしょう」と声かけをしてあげるなどしてほしいと思います。

2つ目は、発達段階に応じて学びのメカニズムを教えてあげること。例えば、小さい頃は意味がわからなくても繰り返しにより覚えてしまうことがありますが、ある程度の年齢になると既知の情報と結び付けて意味を理解したほうが情報の記憶の定着がよくなります。そういった記憶や理解の仕組みがわかるとメタ認知が働き、効果的に学習できるようになります。

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