
中田卓也(なかた・たくや)/ヤマハ社長。1958年生まれ。81年、慶応大学卒業後、日本楽器製造(現ヤマハ)入社。2005年PA・DMI(業務用音響機器・電子楽器)事業部長、10年米国現地法人取締役社長などを経て、13年から現職。(撮影:尾形文繁)
世界唯一の総合楽器メーカー、ヤマハ。コロナ禍では感染への懸念から管楽器などの演奏機会が激減した一方、巣ごもり需要で電子楽器の人気が高まった。2022年5月発表の、25年3月期を最終年度とする中期経営計画では、電子楽器を成長の主軸に据える。コロナ禍で一変した事業環境をどう商機に変えるのか、中田卓也社長に聞いた。
──コロナ禍では従来の音楽体験に制限がかかった一方、新しい音楽の楽しみ方が生まれました。
音楽自体の重要性が再認識されたと思っている。それは家で演奏を楽しむ顧客が増えたということでも証明されたのではないか。例えば、音量を調節できる電子楽器は時間と場所を選ばず楽しめるため人気が高まった。
それ以外では、対面での音楽ライブは制約を受けたが、その反対に音楽などの配信をする人が著名人をはじめ増えた。リアルで音楽を楽しむことの価値が低下したわけではないが、配信で音楽の楽しみ方の選択肢が増えた。この状況は当社にとって追い風で、チャンスだと思っている。
コロナ禍で生きた音楽の新しい楽しみ方
──音楽配信アプリをリリースするなど、ソフトで音楽の楽しみ方を広げる取り組みもしています。
遠隔地でも音の遅れなく合奏や音楽配信ができるアプリ、SYNCROOM(シンクルーム)は、対面での演奏が制限されたコロナ禍で非常に評価された。13年に私が主導して音響機器とネットワーク機器の開発チームを統合した。いずれ音楽ライブや遠隔会議など配信需要が高まると予想して動いてきたことが、コロナ禍で生きた。
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