「先生は、 決して無力ではない」MIT卒・日中英トライリンガル華僑、熱く語る理由 教育革命家が先生を応援する理由、目指す未来

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もちろん、これは自己責任論で言っているわけでは決してありません。先生を取り巻く環境は、自分の責任ではどうしようもできない部分もあるからです。ここまでは自分ができること、この先は自分の力が及ばないこと、という境界を明確にするだけでも、心が楽になることもあると思います。

――先生たちが「できること」についてはいかがですか。

先生たちは、それぞれが「できること」。つまり、自分自身が何をやりたいのかという意思を持つことが必要です。先生になったとき、どんな教育をしたいと思ったのか。あるいは、もし今自分がしたい教育をしたいと思うなら、どうすれば自分のカードで、できるのか。また、例えば子どもたちに見せたいロールモデルであることが難しいと思ったら、転職したり起業したり留学したり、先生を辞めるというのも1つの責任ある行動だと思います。それは逃げではありません。

また、私は留学だけを勧めているわけではないんです。Hero Makersの教員をグローバルリーダーにするという意味は、グローバルリーダーには自分のやることに責任が生じるため、その責任に対する自覚を持ってほしいということなのです。「1人の意思と理想を持った人間として、未来を導くためにここにいる」。そういう意識が大切です。

――これから教師の役割はどのように変わっていくと思われますか。

先生の役割は、本質的な意味では学問を通して人を自由にすることだと思っていますし、その役割はこの先も変わらないと思っています。日本には成熟した塾文化があり、勉強については塾でも学んでいると思いますが、学校の先生には、先生の態度や行動を通して、大人や社会について教わっているのです。

また、日本でよく引き合いに出される米国の教育における、ひとつの例を挙げましょう。PISAなどの国際学力調査によれば、米国は60~70年代と比較して子どもたちの学力が低下している傾向にあります。その理由のひとつに先生の質が落ちていることがあるといわれています。昔は優秀な女性たちが社会で活躍できる代表的な職業が先生であったため、優秀な女性たちが多く先生になっていたのです。しかし、今はそうではない。確かに成績だけですべて測れるものではありませんし、複合的な要因もあるでしょう。ただ、これまで教育カリキュラムが大きく変わっていないことを前提とすれば、先生がどんな人間であるかということと、子どもたちの学力や行く末に相関関係があるのではないか、ということを表わしているのです。

――その意味では、Hero Makersは、先生の新たなロールモデルを提供したのではないですか。

先生はこれまでもつねにロールモデルでした。それはこれからも変わらないのですが、そこがクローズアップされるという点においてHero Makersに一定の功績はあったのかもしれません。子どもたちは周囲の大人たちからさまざまなことを吸収しながら、大人になっていきます。学校で先生は勉強だけを教えているわけではなく、古典的な東洋の考え方からすれば、教育者はロールモデルだからこそ、「先生」と呼ばれているのではないでしょうか。

しかし、他国と比較すると日本の教育のステークホルダーである先生、保護者、子どもたちはそれぞれお互いを信用していない印象があります。例えば、保護者や地域のコミュニティーが先生と一緒になって、子どもたちを教育するのはひとつの理想ですが、あまりそういう例が思いつきません。

――先生たちはどうすれば新たな視点を持つことができるのでしょうか。

ほかの国の教育から学ぶのは本来いいことですが、表面的な部分だけ取り入れて、根底の人権意識などは手つかずのままとか、逆に、他国の教育にも問題があるといって自国を称賛するといったようなループはやめてほしいと思います。どの国の教育でも、いいところもあれば問題もあるのは当たり前です。海外の事例を見て、いちばん読み取るべきなのは、どうやってその問題に対処しているのか。その問題を解決しようとする姿勢や態度を学ぶということではないでしょうか。

――今は公立校の先生からも海外の大学院に進むケースが増えています。英語力を身に付けるうえで、いちばん大事なことは何でしょうか。

まず、自分が手に入れたい未来に必要な英語力をイメージしてから自分の足元をみて、自分のいる場所と、なりたい未来の最短距離を探すような感じにしてほしいです。将来グローバルリーダーになりたいといった教育者としての夢があり、そのために必要な英語力と考えていけば、おのずとやるべきことは決まってくる。必要なのは点数じゃないですよね。そうしたイメージをしたうえで勉強していけば、それほどぶれずに、英語力を身に付けることができるはずです。

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