「先生は、 決して無力ではない」MIT卒・日中英トライリンガル華僑、熱く語る理由 教育革命家が先生を応援する理由、目指す未来

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――Hero Makersをきっかけに、多くの先生たちが新たな活動を始めたり、米国の教育大学院に進んだりするなど大きな成果を残しました。

Hero Makersを卒業した先生たちが多くのメディアに紹介されましたし、先生たちの人生を変えることができたのかもしれません。募集当初から、毎年100人近くの先生の応募があり、下は20代から上は定年間際の先生までが集まりました。世間では年齢が上の先生ほど保守的だといわれていますが、実際には年齢なんて関係ないと活動を通じて感じました。年齢が上でも、よい先生は若い頃からずっとよい先生なんです。若い先生が、変化を起こしやすいというイメージはある意味正しいのですが、校内改革の要として本当に活躍したのは、周囲から信頼のある30代から40代の先生たちでした。30代から40代以上の先生たちは、校長とも話がしやすいなど立場としてメリットがあり、学校を改革するときに大きな力を発揮することができるのですね。リーダーシップのある大人の人材をマインドセットすることは、とても効果的ですし変化を起こすのも早い。これは私にとっても驚きでした。年齢にかかわらず、きっかけさえあれば現場で変化を起こし、有意義な改革をする先生はたくさんいます。

Hero Makersを通じて、先生たちは学校や教育に対して自分たちが感じている苦しみは、実は自分たち自身に責任があることを自覚していきました。それを言い換えれば、自分たち自身が、実はグローバルリーダーであると気づくことです。真のグローバルリーダーになるということは、打開すべき環境を何かのせいにするのではなく、覚醒して自分でできることを考え、行動できるようになることです。Hero Makersでは、20代の先生たちは海外留学を目指す傾向があり、30〜40代以上の先生になると、いま自分のいる場所で自分のやりたい教育を実現したり、海外の日本人学校の先生になったり、あるいは新たに活躍できる場所を求めて転職や起業をする人もいましたね。そのように行動することも含めて責任です。

Hero Makersでの様子。多くの先生が、真のグローバルリーダーになっていった

先生たちは、決して無力ではない

――白川さんは今の学校現場の先生たちに対して、どんな思いを持っていますか。

自分の「立場」と「責任」、そして「できること」をもっと自覚してほしいですね。まず、先生は子どもたちに本当に大きな影響を与える立場にいることを忘れてはいけないと思います。先生は多くの子どもたちの考え方や日常を支配する立場にあるのです。なのに、「自分たちは無力だ」「何もできない」と言っている。先生たちは自身が無力であると思っていますが、実はそうではないのです。

Hero Makersを通じて、先生たちがいろいろな改革に挑戦しました。その中で「教育指導要領では、実は自分のやりたいことを禁じていない」「管理職にお願いしたら、下りると思っていなかった予算が下りた」「自分のやりたいことは、実は文科省には推奨されていて、ブロックしていたのは意見が合わない管理職だった」という本人たちにとっては世紀の発見!のような大きな気づきを得た先生が、何人もいました。誰もそれまで「自分の目的のために使えるカードや制約条件を洗い直してみよう」ということをしてこなかったので、Hero Makersで初めてそれに気付いたのです。自分の持っているカードを洗い直してみると、今いる場所で自分ができることは結構あるものです。ぜひ自分のできることから挑戦してほしいですね。

――自分で嘆いているばかりでは確かに何もできませんね。

先生は子どもたちに対して非常に大きい影響を与える立場にあるからこそ、子どもたちに対して責任が発生します。もちろんそれには、自分自身が充実し、幸せになって活躍する背中を見せる、という責任も含まれます。子どもたちから先生が受け取るメッセージはとても多いからです。

いくら教育論を戦わせたところで、日本の実質賃金は大幅下落しており、物価は緩やかに上昇している。そうした厳しい社会へ子どもたちを送り出さなければならない事実は変わりません。先生たちには、厳しい社会を生き抜ける子どもを育てるという大きな責任があるのです。その立場と責任、もっと言えば立場を権力と言い換えてもいい。そんな大きな権力を持つ先生が、何もできないと言っていては、自分の責任で駄目な先生になってしまう。だからこそ、もう一度、自分の持ってるカードを洗い直し、何ができるかできないか、何をしたいかしたくないか、すべての先生に考えてみてほしいのです。そうしてみると、案外明るい希望が見えてくるかもしれません。

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