学習指導要領改訂と3観点の整備で重視したい「自らの学習を調整」する力 3観点「主体的に取り組む態度」をどう見るか

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自身の取り組む「OKJ」では、5~10分程度の予習を子どもに課すことがあるが、それだけで授業の理解度が大きく変わるそうだ。新しい言葉は、まったく知らない状態よりも、簡単にでも予備知識を得た状態のほうが頭に入る。また、予習でわからないところがあれば、子どもはそれを明らかにするという目的意識を持って授業に臨むこともできる。

「小学校低学年の頃は授業だけでよくても、いずれはテスト対策や受験勉強など、1人で家庭学習をすることも必須になります。教員には、そうした子ども自らが学ぶ時間と授業時間とを一連のサイクルと捉えて指導してほしいと思います」

学校での指導では教科書に沿った「内容の指導」に偏りがちだが、市川氏は授業で学習のやり方を教える「方法の指導」の重要性を説く。

「年齢が低いときは、何のために勉強するかという目的による動機づけよりも、やったらできたという喜びが学習意欲につながりやすい。教員はその成果が実感できる学習方法を指導し、次第に内容のわからなかった部分を子どもが自己診断できるようになるといいですね」

複数の子どもが集まったとき、中には自発的に学ぶことができる子どももいるが、多くのいわゆる「中間層」はそうではない。この層は言われなければ学習の工夫を考えないが、言われれば考えることもできる。また少数派だが、言われてもやらない層もいるだろう。多数派の中間層に適切な方法の指導をし、その主体性を伸ばすことで、言われてもやらない層への指導により時間を割くこともできるようになるはずだ。

ここまで市川氏が重要だと挙げてきたことは、実社会で求められることにもつながっている。例えば仕事でプロジェクトを担当することになったとき、周辺情報や時流も含めた、対象への「深い理解」は欠かせない。「人に説明してみること」は、そのままプレゼンテーションや報告書づくりの表現力にもつながるだろう。プロジェクトがうまくいかなかったとしても、「何を間違えたかを振り返り教訓にすること」で、社会人としての成長の糧にすることができる。だが実際に学校が長く取り組んできたのは、こうしたことと接続しない、穴埋めクイズのようなペーパーテストだったのだ。

市川氏は「時間をかけても教育現場をよりよくしていきたい」と語る。そのためには実績を見せることが必要だと考え、実践に基づいた提案を続けている。

「学校には情意面のカウンセラーはいても、学習に関するカウンセラーは普通いません。私の研究はそうしたカウンセリングとしての面を持ち、忙しい教員の方がなかなか見取り切れないことを多くくんできたと考えています」

この20年ほどは小・中学校の教員との協働で研究に取り組んでおり、市川氏の考えを現場での指導に生かす人も増えているという。学習の自己調整に注力することで、子どもの学力が向上したなどの結果も表れているそうだ。

「お話ししてきたような手法を取り入れる学校が増えれば、それを見て、『うちもやってみよう』と思う学校がまた増えていくのではないかと期待しています」

一足飛びは難しくとも、少しずつなら変えていけるはず。そのために研究者と学校教員が連携して、できることを続けたいと語った。

(文:鈴木絢子、注記のない写真:pearlinheart /PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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