25%以上が帰国生の「かえつ有明」、多様性を尊重し生徒が互いに刺激し合う 海外進学も支援、「未知」を楽しむ人を育てる

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
独自の探究科目「サイエンス科」や英語教育、帰国生を積極的に受け入れるグローバルな姿勢で知られるかえつ有明中・高等学校。江東区のいわゆるウォーターフロントエリアに位置するが、教育方針に引かれて東京都外から子どもを通わせる家庭も多い。志願者数は右肩上がりで、2022年度入試でも全体の倍率が3倍を超えたほか、競争の激しい受験方式では例年2桁倍率となる人気校だ。そのリアルな学校生活や授業の進め方について、生徒や教員の生の声とともに掘り下げる。

数学もアクティブラーニングで、これまで以上の力を磨く

6月のある平日の午後。りんかい線の東雲駅から徒歩10分ほどのかえつ有明中・高等学校を訪ねた。校内ですれ違う生徒に「ここはどんな学校ですか?」と聞くと、「先生も生徒も優しいです」「困ったときにはみんな助けてくれる」と異口同音に答える。

校舎3階にある情報センター「ドルフィン」は、一般的な学校の図書室に当たるスペースだ。中に入ると高校1年の数学の授業が行われていた。学内で「A組」と呼ばれる「高校新クラス」では、数学にもアクティブラーニングを採用している。この日の授業を取り仕切るのは生徒3人によるチームだ。この授業では毎回異なるチームが問題を作り、出題者としてほかの生徒にテスト用紙を配る。教員は少し離れた所に立ち、基本的に口を出さない。担当教員の佐藤あやか氏も「どんな問題が出されるか、授業当日までわからない」と語る。

「こうした実践と基礎の座学を繰り返すことで、インプットとアウトプットの相乗効果や、表現力のアップを狙っています」

生徒自身が問題を出す立場を経験することで、良問とは何か、出題の意図は何かということを考えるようになり、解答者としての対策も立てやすくなる。また、学びに対する真摯な姿勢も育つのではないかと佐藤氏は期待している。

「出題者として解説する際には、『正しさ』への責任が生じます。また問題のどこがよかったか、あるいはよくなかったか、生徒同士で意見を出し合い、チームごとの振り返りも行います。失敗する前提で取り組んでいるので、何度もリトライし、未完成のまま学び続ける姿勢が身に付くのではないでしょうか。旧来の『ただ得点を稼ぐための勉強』では生まれなかった効果だと思います」

高1の新クラスの数学の様子。生徒が問題を出し、質問にも答える(左)。この授業を担当する佐藤あやか氏(右)

生徒が作った問題を見てみると、あらかじめいくつかの数字が入った3×3の「魔方陣」を埋めさせるものや、「ケーキを8等分したい。ただし刃を入れられるのは3回まで」など、公式を当てはめるだけでは解けない難問がそろっていた。「高校生になるまでに習った範囲を応用して解ける設定」にしてあるとのことで、解答者からの質問も受け付けながら、生徒がホワイトボードを使って解説を進めていく。

生徒が発信「進学と就職以外の選択肢を知ってほしい」

別のスペースでは高2の「プロジェクト科」の授業が進行中だ。これは中学校では「サイエンス科」として実施されるもので、科学や社会、自然など幅広い分野を扱う、かえつ有明独自の探究科目だ。中学は週に2時間、教員のサポートとともにワークショップ形式で行うが、高校ではプロジェクト科として引き継がれ、生徒自身がテーマを選んでより主体的に取り組むことになる。

この日、生徒たちはチームごとに模造紙を広げてポスターを制作していた。それぞれのチームが選んだインターン先の企業から、「わが企業の情報を調査せよ」というミッションが与えられているのだ。生徒は街でその企業が関わっているものを探したり、街頭を行く人に企業イメージについてインタビューしたり、自分たちで考えたやり方で情報を集めてその内容をポスターに落とし込もうとしていた。この授業を担当する教員は若菜隆氏だ。同氏はこの授業が「将来の進路選択の幅を広げる」と考えている。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事