25%以上が帰国生の「かえつ有明」、多様性を尊重し生徒が互いに刺激し合う 海外進学も支援、「未知」を楽しむ人を育てる
「何のために大学に行くか、どんな仕事をするのか。こうした選択を迫られたとき、志望理由が書けない子が多いと聞きます。私自身、過去に卒業生を送り出した際にもそんな生徒を見てきました。このプロジェクト科では早い段階から実社会につながる学びを経験できます。今はぴんとこなくても、後になってきっと『あのときのアレはコレだったんだ!』と感じる機会が来るはずです」
実は若菜氏の担当科目は体育で、決して探究科目の専門家ではない。サイエンス科やプロジェクト科の担当教員は毎年変わるので、生徒とともに教員も学び続けなければならない。多様な研修を受けつつ、自らの専門科目とそうでない科目の知見を相互に生かしながら指導しているが、「生徒たちのほうが柔軟なので、ときには生徒に教わることもある」と笑う。

3年A組の加々美健太さんは、先輩たちが生き生きと学ぶ姿を見て「A組」、つまり高校新クラスへ進むことを決めた。中学校に入学するときからずっと「何が起こるかわからないような、決まったレールを外れる人生のほうが面白いのではないか」と思っていたという。
「高校時代は興味のあることを深掘りするための時間だと捉えて、やりたいことにどんどん挑戦してきました。SNSを通じて起業家や投資家の方に連絡を取り、直接話を聞かせてもらったことも一度や二度ではありません」
最初は「変な高校生だと思われていたかもしれない」と言うが、そうした人たちから刺激を受けることで、加々美さんはやがて、この経験を学校の仲間にも共有したいと考えるようになる。
「大学に進学して就職する、という選択肢以外にもいろいろな生き方があるということを、学校の仲間にも知ってほしいと思ったのです」
教員にかけ合い、高2の夏にA組のプロジェクト科の取り組みとして、クラス内ビジネスコンテストを企画した。すでに築いていた自身の人脈を生かし、経営者や投資家など、生徒たちが考えたビジネスプランを評価してくれるプロフェッショナルを集めた。
「コンテストの発案から実現までの道のり、新たなビジネスプラン作成など、すべて一人ではできなかったこと。先生やクラスの仲間がいたから頑張れたと思っています。『知ってほしい』という思いで始めたことですが、伝えたかったこと以上に、僕自身が得るものが大きかったと感じています」

仲間に刺激される6年間で「予測のつかない成長」を
加々美さんは中学校時代の自分を「年齢的なものなのかな、少し孤立していたと思います」と振り返る。
「でも自分の中に、興味があることや好きなことといった軸は持っていました。この学校ではそれがいちばん大切なことで、その軸や考えをつねに表に出すことが必須なわけではありません。『沈黙は悪ではない』と感じられる風土があったので、ここでの高校生活に懸けてみようと思うことができました」
やがて加々美さんは自分の関心分野に積極的になり、高校では集団でいることの楽しさも強く感じられるようになったそうだ。広報部長で国語科教員の宇野岳史氏も、加々美さんのこの言葉に大きくうなずく。