eスポーツも導入、独自改革した新巽中が実感「非認知能力と学力の関係」 ゲームは悪か?生徒が問うプロジェクト型学習

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第1回「勝手に!eスポーツ大会」

印象的だったのは、司会進行を務めた生徒たちだという。司会進行役が決まったのは開始5分前だったのに、普段は控えめな生徒がマイクを握りしめて「お前ら行くぜー! 準備はいいかー?」と周囲を盛り上げたそうだ。

「ほかの先生に『どんな指導をしたら、あんなふうにしゃべるようになるんですか』と聞かれたくらい。運動が得意な子は体育大会で、表現が得意な子は文化発表会で輝くように、eスポーツ大会で輝ける子もいるのだと実感しました」

第1回大会で司会を務めた生徒たち

また、競技や観戦のマナーを提案する生徒がいて、「教員にはない視点にハッとさせられました」と山本氏は語る。

「一般的なeスポーツ大会ではやじが多く、よくトラブルが発生するそうです。生徒はそのことを知っていたのでしょう。対戦相手に対して暴言やあおりはしないこと、味方同士はポジティブな言葉をかけ合おうといったことを開始前に参加者へ呼びかけたのですが、大会に招待したプロゲーマーの方に『きちんとマナーを提案できる点がすばらしい』と褒めていただきました」

その後、第2回目は21年11月、3年生が行政や企業などとともに「ゲームは文化の壁を越えるのか?」を主題に、生徒と留学生、外国をルーツとする高校生や大学生が交流するイベントで大会を開催。

第3回目の22年3月は泉佐野市立新池中学校(以下、新池中)との共催で、両校の1年生がeスポーツと非認知能力の関係性を探究すべく「ゲームは見えない力を育めるか」をテーマに大会を行った。

「生野区は5人に1人が外国籍の方で、多文化共生の街」(山本氏)であり、第2回大会には多様な立場の人が参加した(左上・右上)。第3回大会は泉佐野市立新池中学校と共催(左下・右下)

「各回とも、それぞれの問いかけに対し確かな手応えが感じられ、非認知能力を含めた資質・能力を育めたのではと感じています。チームをつくって対戦するので、どうやったら勝てるのかという戦略・戦術を考える中でコミュニケーションが生まれたり、他者の個性を尊重し協力する姿が見られたり。また、チーム編成のときには男女混合チームが自然発生しましたし、とくに2回目は性別だけではなく、年齢、国籍、学籍、立場など、あらゆる垣根を越えた交流が生まれました。これはeスポーツならではの成果だと思います」

「非認知能力が上がれば認知能力も上がる」

文部科学省の「平成 25 年度 全国学力・学習状況調査報告書 クロス集計」でも「学習意欲が高い児童生徒のほうが、教科の平均正答率が高い傾向が見られた」など、近年、非認知能力と認知能力の相関性を示す研究が報告されているが、山本氏も次のように話す。

「大阪市の学力は府下でも決して高いとはいえず、本校はその中でもこれまで結果を出すことができていなかったようです。私が赴任した2016年ごろは、数学だと大阪市の平均より12ポイントくらい低かった。しかし、今は全国学力・学習状況調査やチャレンジテストなどの結果を見ると、教科によっては大阪市の平均を超え、大阪府の平均にも迫る勢いです。非認知能力が上がれば認知能力も上がることを実感しています」

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