eスポーツも導入、独自改革した新巽中が実感「非認知能力と学力の関係」 ゲームは悪か?生徒が問うプロジェクト型学習
「本校が育成したい非認知能力は、学校生活の中で育まれるわけですが、別に体育大会だろうが、文化発表会だろうが、eスポーツ大会だろうが何でも構わないわけです。eスポーツだからこそ輝ける子がいるかもしれないし、それを肯定的に評価する社会になれば子どもたちの活躍の場はもっと広がります。多様性を受け入れる心の素養も育まれるでしょう。また、常識や慣例に従うことが多い学校にゲームを取り入れることで、われわれ大人たちの『当たり前』も書き換えられるのではないかと考えました」
タイミングもよかった。ちょうどその頃、新巽中は、パナソニック教育財団の助成やGoogleの協力などを得て校内で「勝手にGIGAスクール」(19~20年度)という取り組みを展開。全生徒・教員に1人1台の端末を配布し、学習環境を整えるためにネットへの接続を無制限にするほか、動画視聴もゲームも自由にできるようにしていた。コロナ禍も重なり、教員、生徒、保護者たちは実際にテクノロジーの扱い方に日々向き合っており、その議論も進んでいたのだ。
「議論の中で出てきたのは、ゲームやテクノロジーを『言葉』と同列に捉えて接し方を考えてみようということでした。言葉という道具は人生を豊かにもするし、人を傷つけもする。これと同様に、テクノロジーだって学びの道具にもなるし、妨げにもなる。私たち大人は子どもたちから言葉を奪わないのと同様、スマホやゲームなどをはじめとするテクノロジーを奪うべきではない。問題は道具の使い方であって、大切なのは子どもたちをいかに正しい使い方へ導けるか。私たちはそう考えました」
こうした背景もあり、プロジェクト型学習としての導入にも大きな反対はなかったが、eスポーツと教育のマッチングに懸念を示す教員や保護者はいた。そこで山本氏は、eスポーツ大会の運営を通じて非認知能力などの教育効果が期待できること、ゲームとの付き合い方を学ぶ内容であること、ゲームに関わる新しい産業を学ぶことで職業観を広げるものだということなどを丁寧に説明。これからの社会に必要不可欠なテクノロジーに、子どもたちと一緒に向き合っていこうと訴え、理解を得たという。
eスポーツのプロジェクト型学習で「非認知能力」が向上
そんな経緯で新巽中では、プロジェクト型学習の一環として、ゲーム「脱獄ごっこ」で対戦する「勝手に!eスポーツ大会」がすでに3回開催されている。第1回目は2021年2月、2年生が「ゲームは悪なのか?」「ゲームは学びの道具になるのか?」「人がワクワクドキドキする仕組みってどんなものなのか?」という3つの問いを立て、校内にて成果物として動画・大会・プレゼンテーションの3部構成で発表を行った。