スポーツや社会人教育など学校以外の教育に触れて「これは学校にも使えそうだな」とか、漫画やアニメから「今の子たちはこんなことに興味があるんだ」「これは例え話に使えそうだな」など、多種多様なジャンルを自分の授業や学級経営と結び付けて考えています。
さまざまなジャンルを学ぶ中で、改めて「学校教育」を俯瞰的に見られるとともに、自分自身のこれまでの常識を疑う視点が立ち現れてきます。私たち教師は、教育界の内部からのみ学ぶ割合が極端に高すぎるように感じます。
6歳で小学校に入学し、大学を出てすぐに教師になり、60歳まで勤めあげるとすると、実に55年も学校教育の中にいるわけです。プライベートの友人や家族もほとんどが学校関係者、というケースも多いでしょう。学生時代の先生や同僚の先輩教員から学んだことを忠実にやり続けているだけは、いつまで経っても教育はアップデートされませんよね。
これは実際にあった話ですが、管理職でもSDGsやウェルビーイングという言葉自体を聞いたことがないということがあります。ほかの職業ならまだしも、未来を生きる子どもたちの大事な時間を預かる私たちが、今の社会のことを知らないのはさすがにまずいのではないでしょうか。
総合的な人間力は、さまざまな経験によって培われていきます。映画や小説から知識・アイデアを得ることは多いし、スポーツからヒントをもらうこともあるでしょう。反対に、どれだけ具体的な実践事例や発達心理学を受講していようとも、「自分には関係ない」とか「どうせ無理」「ポイントを稼ぐため」などといった気持ちでは、残念ながら教師力にはつながらないのではないでしょうか。
もちろん、スキルアップは大切です。スキルアップを決定づけるのは、何をやるかではなく、研修中に「自分の教育活動に生かすならどうするか」という視点を持ち続けられるかどうかだと思うのです。
これまでの学校教育で積み上げられてきた輝かしい実践や英知の数々を蔑ろにするわけではありません。むしろこれまでの学校教育の中で、先駆者が築き上げてきた授業実践や学級経営をクリティカルに捉えなおし、新たな実践の創造に挑戦していく。それこそが、これからの時代に求められる教師像といえるのではないでしょうか。
(注記のない写真: yoshan / PIXTA)
執筆:蓑手章吾
東洋経済education × ICT編集部
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