日露戦争諷刺画大全 上・下 飯倉章著
収録された諷刺画658点にまず圧倒される。その多くは日露戦争時に英米独仏などのメディアに掲載されたものだが、神話や史実のパロディあり、誇張あり、動物その他の例えあり、辛辣、皮肉、滑稽、悲哀を表出して、時にステレオタイプであっても、大概は独創的で日露戦争の本質に迫ったものが少なくない。膨大な原資料から作品を選び出し、分類し、内容を読み解く作業の果てに本書の狙いはほぼ達成された。画ごとの解説は、画中の微小な文字まで翻訳され、登場人物の紹介も丁寧だ。
旅順攻防戦、奉天会戦、日本海海戦など戦いのすべてが網羅されているうえ、ロシアの内情、ポーツマス講和会議、列強の利害と思惑、黄禍論、戦費調達そして戦後まで扱い、日露対決の全体像が浮かび上がる。列強、第三者から見た日露戦争とその日本観を知ることを通じて戦争の真実に初めて迫りうる面も少なくない。読み応え十分の労作である。(純)
芙蓉書房出版 各2940円
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