代理店関係者によると、「ドコモでんき」の手数料は「ENEOSでんき」の半分程度。だが、「ドコモでんき」はドコモが代理店の成績を総合評価する「統一評価」の査定に組み込まれている。統一評価は、四半期ごとに行われる5段階のランク分けだ。
低評価の「1」か「2」を取るとドコモからの支援金が大幅カットされるほか、連続で「2」以下を取ると成績不振を理由に強制的に閉店させられるという。「ドコモでんき」と競合する「ENEOSでんき」の取り扱いを続ければ、この統一評価に少なからず響くようだ。
「ENEOSでんき」の取り扱いを諦めた代理店関係者は、統一評価に響くだけに「ドコモのほうが完全な『後出し』だが、従うほかに道はなかった。『ドコモでんき』は事実上、強制なのだから」と話す。
さらにドコモは昨春から、ショップによる「端末を購入した来店客の初期設定サポート」など有料の接客サービスにも介入し、高率の手数料を取る。初期設定サポートの場合、ドコモが料金を一律3300円に定めるうえ、3分の1の1100円を手数料として代理店から徴収しているのだ。
代理店関係者は「うちが人件費を払うスタッフが長い時は1時間以上割いて対応するサービスなのに、ドコモから3割以上の手数料を取られるので、メリットは限られる。ドコモの担当者に手数料の根拠を聞くと『看板代だ』といわれた」とこぼす。
期限付きの閉店支援金
ドコモがステップ1やステップ2で代理店の稼ぎを減らしたり、独自収益の拡大を阻害したりする「兵糧攻め」を行ったうえで、仕上げに行うのがステップ3の「タイムリミット付きの閉店の募集」だ。
代理店関係者によると今春、ドコモは代理店に対し、2023年3月末までの閉店を2022年10月末までに申し出れば「店舗統廃合支援費」を出す方針を伝えている。具体的には、ショップ規模に応じて毎月出している「運営体制支援」「家賃支援」などの支援金を10カ月分支払う条件を提示している。支援費は店舗で異なるが、代理店関係者の試算では1店舗当たりおおよそ1500万~2000万円程度の見込みだという。
だが、ドコモショップを運営する代理店は5年や10年、あるいはそれ以上の賃貸借契約をしているところも少なくない。代理店にとっては予期しなかったタイミングでの撤退となれば、残る賃料負担など不慮の損害が発生しうる。