スポーツ庁シンポジウム、部活の地域移行で「日本のスポーツ」が一変する訳 運動部活動の検討会議、提言案の実現に課題も
勝つ喜び、負けて悔しい思いをする勝負もスポーツの魅力の1つだが、友人をつくったり、体を鍛え、人間性を高めたり、楽しんだりすることもスポーツの目的だとして、「子どもたちが目標を達成できるように、それぞれの成長に最適化した指導環境づくりの点で、柔道界には、まだ課題があると感じている」と語った。
一方、西氏は地域移行で「生徒の運動部離れが起きてしまっては本末転倒」と話し、生駒市では、部活動に参加する生徒を増やすため、保護者や兄弟姉妹、地域住民を巻き込んだ多様性のある部活動の推進に取り組むとした。
地域部活動の推進には、自治体や各種団体の協議体ではなく、一元的に対応できる「ワンストップ支援」の拠点が必要だと強調。「学校部活動の形が変わることには個人的に寂しい気持ちもある。大会は大事なモチベーションだが、子どもたちが地域の人と一緒に、楽しくスポーツを続けられるようにしたい」と話した。
友添氏は、学校部活動には、問題行動の抑止、授業や学校生活との相乗効果なども期待され、80年代には部活動の「必修化」が進められた歴史を振り返り、「今も3割の学校が強制加入になっているが、生徒の自発的な意思に基づくべきだ」と語った。
大会についても、トーナメントを勝ち残る強豪校は1年中、試合をしているような状況にあるとして、大会数の精選や地域部活動としての参加資格などの見直しを進めていることにも言及。地域によって事情は異なり、移行のやり方は1つではないとして、検討会議では多様な選択肢を提言したいと語った。
スポーツ庁からは、今井氏が「生涯を通じてスポーツに親しむ素地の一歩」として制度を整備し、実証事業の成果を事例集にまとめて今後の取り組みの参考にしてもらうと説明。最後に室伏広治長官が「部活動で1つの競技に経験が偏ることがないように、さまざまなスポーツに楽しむ機会を提供したい。中学2年で引退などと言わず、継続的にスポーツできるような環境づくりを進める」と締めくくった。
都市部と地方など、地域の実情において現状や課題は大きく違うことから、部活動の「改革集中期間」にスムーズに地域移行することはなかなか難しいと思われる。だが、少子化に伴う部活動運営の難しさや、進まない教員の働き方改革の深刻さにいよいよ向き合わなくてはならない時が来ている。
(文:新木洋光、注記のない写真:hamahiro / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら