スポーツ庁シンポジウム、部活の地域移行で「日本のスポーツ」が一変する訳 運動部活動の検討会議、提言案の実現に課題も

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「運動部活動の地域移行に関する検討会議」提言案のポイント
・まずは休日の運動部活動から段階的に地域移行
・2023年度から25年度末までの3年間を「改革集中期間」に指定
・平日の運動部活動の地域移行は、地域の実情に応じてできるところから推進
・実施主体は総合型地域スポーツクラブやクラブチーム、民間事業者などの多様なスポーツ団体

座長の友添氏は、2048年には中学男子野球部の部員が1校当たり3.5人になるという推計を示して「もはや合同部活動や拠点校方式(のような小手先の策)では通用しない。抜本的な見直しが待ったなしだ」と訴えた。

友添秀則(ともぞえ・ひでのり)
スポーツ庁「運動部活動の地域移行に関する検討会議」座長、日本学校体育研究連合会会長
(写真:「運動部活動の地域移行に関するオンラインシンポジウム」より)

「運動部活動が肥大化してきたのは、それだけ魅力があるからだ」と話した名古屋大学大学院教授の内田氏も、昨年11月に実施した教員対象の調査で、地域移行を望む回答が8割を占めたという結果を提示した。

「もう倒れそうだという先生だけでなく、部活動指導が大好きという先生でも状況を変えたいと考えている」と、現状の部活動が限界に来ていることを示唆して、「肥大化してリソース不足に陥った中学校の部活動を持続可能な形に見直す必要がある」と述べた。

また、部活動のために土・日も休みがなくなる状況に「学生は、部活動の指導があるからと教職を諦めている」として、労働環境、不足する教員採用数の確保の点からも改善を促した。

スポーツは「ただ」という意識の払拭を

一方で改革には、地域において部活動の受け皿となる団体の運営、指導人材の確保など、さまざまな課題が想定される。シンポジウムでは、原則、受益者負担となる地域部活動の費用負担が焦点の1つとなった。

運動部活動の地域移行に関する課題
・スポーツ指導者の確保、育成
・活動場所となるスポーツ施設の確保(学校施設、公共施設の活用を想定)
・地域のスポーツ団体なども大会に参加できるよう主催者と調整が必要
・会費や保険の負担について、それに伴う困窮家庭の支援 など
内田 良(うちだ・りょう)
名古屋大学大学院 教授
(写真:「運動部活動の地域移行に関するオンラインシンポジウム」より)

内田氏は「部活動が地域に移行した後の保護者の家計負担について懸念の声が増えている」と指摘した。これまでは「平日は“ただ働き”、土日もわずかな手当てで指導する教員の“善意”」で成り立っていたが、「時間を使ってくれる指導者には対価が必要」と述べた。

また、活動に参加する機会保障の観点から、国の予算措置などによる家計負担抑制にも言及。現時点でも遠征費などで多額の保護者負担が発生しているとして、費用負担を検討する際は、現状の費用も見える化すべきと述べた。

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