「卒業アルバム制作」教員と保護者の負担を軽減するAIシステムの実力 高精度の顔認識が好評、自動セレクトも可能に

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オンライン校正指示機能のイメージ。コメント挿入、写真の差し替え指示やトリミングの変更指示などが可能
(写真:エグゼック提供)

22年度4月からは、写真の自動セレクト機能も追加。写真館は見栄えで写真を選ぶが、学校は平等の観点から写真を選ぶため、そのギャップによって差し替えが何度も起こりがちだった。そこで、卒アルでよく使われる場面や表情と児童・生徒の登場回数の均一性を両立するセレクト機能を開発したのだ。卒アルの写真の傾向を明らかにするため、全国の写真館の協力を得て100冊以上の卒アルを借りて分析し、AIに学習させたという。

「画像認識AIは海外で開発されたものが多く、日本独特の行事文化を検出できないので独自に開発しました。たぶん世界初のAIです。早速試してくださった写真館さんからは、『想像以上に使えた』との評価をいただいています」と、山中氏は説明する。

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自動セレクト後の画面イメージ。卒アルに適した写真をAIが判断し、種目の偏りなくセレクトしてくれる。笑顔や動きのある写真も優先的に抽出してくれる
(写真:エグゼック提供)

早めの入稿が「卒アル制作関係者」全員のブラック化を防ぐ

気になる費用だが、システムにアップロードする候補写真1枚当たり0.5円のほか、児童・生徒1人当たり年間300円がかかる。前者は顔認識にかかるコストで、写真データを持っている制作主体者(多くの場合は写真館)が負担している。後者の費用は写真館が制作主体者である場合、各写真館によって学校の負担率が変わってくるという。システム利用のアカウントの追加発行は無償だ。

「私個人としては、作業量を考えると安い費用だと思います。しかしうちの園は、2022年度は費用面で保護者全員の了解を得るのが難しいそうで、アルバムスクラムを使わないと聞いています」とA氏は話す。

この点に関しては山中氏も、「『とくに先生方は一度使うと楽なのでやめられない』といったお話はよく聞きますが、その年度の園や学校、保護者、写真館の意向などによって契約に至らないケースはあります」と明かす。ただ、ここで収益を上げようとは思っていないという。

「アルバムスクラムを気に入っていただくことで、主力の写真販売システムの契約につなげられたらと思っていますが、そもそも業界に貢献しようと思って開発したものですので、広く使っていただきたい」と、山中氏。そう強調する背景には、卒アル制作のフロー全体の深刻なブラック化がある。

「例年、12月から翌年3月にかけて、写真館、学校、保護者、アルバム制作会社と全体が一気に忙しくなります。とくにアルバム制作会社は残業がすごいと聞きます。先生も日頃からお忙しいので冬休みにご自宅で集中して作業をされる方が多いのですが、今から写真選定を進めて入稿を早めていただけると、各関係者の課題解決にもつながります」(山中氏)

近年、教員も保護者も多忙を極めており、PTAなどの業務を外注する学校も出てきている。無償労働にしては負担が大きすぎる卒アル制作も、アルバムスクラムのような支援ツールの導入などを検討してもよいのではないだろうか。

(文:編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:mits/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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