「卒業アルバム制作」教員と保護者の負担を軽減するAIシステムの実力 高精度の顔認識が好評、自動セレクトも可能に

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「今までは保護者に5回ほど来校いただき、1回につき2時間ほど作業してもらっていたようです。しかし私の担当年度は、システムの使い方の説明で1回、20分程度の最終確認で1回と、計2回の来校依頼で済みました。仕事をしている保護者も多いので、保護者目線でも効率的だと思います」(東條氏)

実際、大阪府の保育園で21年度に卒アル係を務めた保護者A氏も、「こうしたシステムは絶対に使ったほうがいい」と言い切る。ほかの保護者が卒アル係を敬遠する中、強く頼まれてしぶしぶ引き受けたA氏。仕事や育児で多忙なため何とか効率化したかった。

「卒アル係は、子どもたちが平等に掲載されるよう枚数を数えなければいけないので大変だと聞いていました。本格的に動き出すのは11月~12月ですが、ピーク時には週末ごとに集まり、夜中まで作業した年度もあったそうです。それはいやだなと思い、ネット検索でアルバムスクラムを見つけ、利用することにしました」(A氏)

ちょうどコロナ禍で休園もあった。そんな中、各自のパソコンやスマホで写真選定ができ、かつメンバー全員がお互いの進捗状況をオンラインで見ることができるので、集まらずに済んでとても助かったという。

「顔認識の精度にも感動しました。コロナ禍もあって枚数を多く集められなかった行事は精度が多少落ちましたが、アナログで一から選ぶよりずっと効率がいいと思います」(A氏)

オンライン校正指示と自動セレクトの機能でさらに時短

このようにアルバムスクラムは教員や保護者の負担を大きく軽減しているようだが、実は開発・提供元であるエグゼックの主力事業は、卒アル制作ではない。同社はこれまで15年間、写真をネット販売できるシステム「フォトストア」を全国約800の写真館に提供してきた。エグゼック取締役 経営企画部長の山中淑史氏は、次のように語る。

「本業を通じて、写真館、学校、保護者、アルバム制作会社と、卒アル制作の関係者全員がアナログ作業で苦労されているのを目の当たりにしてきました。以前から何とかしたいと思っていて、2019年にフォトストアに実装した顔認識AIシステム『かお探!』が想定以上に高精度だったため、これを活用しようと考えました」

エグゼック取締役 経営企画部長の山中淑史氏
(写真:エグゼック提供)

そして20年度、コロナ禍の中でかお探!を搭載したアルバムスクラムをリリース。業界への貢献のために開発したシステムなので、初年度は無償提供に踏み切った。

その結果、20年度は約100の写真館と約300の学校に利用が広がった。有償契約を始めた21年度は、約300の写真館、約700校(そのうち300校は1校無料キャンペーンによる利用)の学校にシステムを提供。受注を増やしている要因について山中氏はこう分析する。

「卒アル制作システムに顔認識AIを搭載する会社は今もほとんどなく、先行できた点が大きい。写真館のニーズに寄り添い、使い慣れたレイアウトソフトをそのまま使える仕様にした点も好評を得ています。また、当社は『マスクをした写真もちゃんと検出してくれる』など顔認識の精度が高い点を評価いただくことが多く、実際に利用してくださった先生の口コミのほか、文科省の『全国の学校における働き方改革事例集』で紹介されたこともあり、先生から直接お問い合わせをいただく機会が増えました」

教員や保護者だけでなく、当然ながら最初の写真セレクトやレイアウトを担う写真館も負担が大幅に減っている。候補写真の絞り込みが楽になるだけでなく、学校や保護者とオンラインでつながることができるのでデータをCD-Rでやり取りする必要がなくなるほか、原稿や膨大なインデックス印刷も不要になるので学校訪問の回数も減ったという。

さらに、21年度に追加した「オンライン原稿校正指示機能」を使う写真館は、校正紙のやり取りのため何度も学校に行かなくて済むようになった。「例えば、ある写真館さんは、校正指示機能の利用により、学校訪問が初回と最終の打ち合わせだけで済んだと聞いています」と、山中氏は話す。

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