子どもの権利守る独立機関「子どもコミッショナー」海外と日本の決定差 海外は体罰、貧困、いじめなど制度改善で成果
ウェールズでは、子どもの貧困問題に継続的に取り組んでいます。ある年に500人くらいの子どもの声を聞いてさまざまな提言を含む報告書を提出しました。その結果、学校給食の無償提供の対象拡大や、制服規則の柔軟化などが広がったようです。コロナ禍では、経済的に苦しい家庭の子どもへの給付金の情報が対象者にきちんと届いていないことを指摘し、自治体などによる積極的な広報を推進したところ、かなりの額の給付につながったそうです。
フィンランドでは、児童養護施設にいる子どもや卒業した子どもの声を聞いたうえで、支援対象者の年齢を25歳まで引き上げるという提言をし、法改正を実現しました。
オーストラリアでも、政府が税と社会保障の改革をしたときに、コミッショナーが奨学金制度など子どもを持つ家庭に関わる社会保障制度の改善を提言して、いくつか達成しています。
いじめもよく取り組まれているテーマです。例えば、ノルウェーでは政府が学校のいじめ対策を検討していたときに、コミッショナーが当事者である子どもの声を聞いて報告書を政府に届けました。その結果、学校がいじめを認識してから対応しなければいけない期間が短縮されるなどの制度改善に結び付きました。
ネパールでは、新憲法の起草過程で子どもたちが意見を述べる機会を設け、子どもの権利に関するまとまった規定の導入につなげた実績があります。インドネシアでも、父親がインドネシア国籍でない子どもに関する国籍法の規定の改正を提言し、実行されました。
このように法律や制度の細かいところを少し変えることで、多くの子どもの救済につなげた例はたくさんあります。政府や省庁などから指示されたテーマを取り上げているだけでは、こういう成果はなかなか上がりません。諮問機関のような形ではなく、子どもの声に基づいて調査課題を選ぶことができ、自由に動ける形での独立性が重要になります。
ベースとなる「子どもの権利」は先生にこそ知ってほしい
――日本でも子どもを救うための第三者機関は30以上の自治体にありますが、どうご覧になっていますか。
すべての機関について把握できているわけではありませんが、20年以上前に国内初として設置された兵庫県川西市の「子どもの人権オンブズパーソン」は、個別救済も制度改善の提言もできるようになっていますね。
ただ、日本は個別救済ができていても川西市のように制度改善までできている所は少ないようですし、常勤のスタッフがいない組織もあると聞きます。少人数かつ非常勤の構成ですと、常勤が当たり前である海外のように効果的に機能するのは難しいのではないでしょうか。
――日本でも国レベルのコミッショナーが設置されるとしたら、どういう機能を持つべきだとお考えですか。
国レベルで必要なのは、まず子どもの声を聞き、政策を提言する機能です。そのためには独立性が不可欠で、担当者は専門家かつ顔が見えるほうがいいでしょう。海外のケースを見ると、「子どものことならこの人に言えばいい」「この人が言うことなら耳を傾けてみよう」と思えるような人のいる組織がうまくいっている印象です。こうしたアクセスのしやすさは重要です。