子どもの権利守る独立機関「子どもコミッショナー」海外と日本の決定差 海外は体罰、貧困、いじめなど制度改善で成果

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とくに特定の組織や個人を糾弾するのではというイメージを持っている人もいるようですが、決してそのような怖い組織ではありません。子どもが困っている問題を見つけ、それを改善するために政策提言という形で発信する専門家の組織です。

海外では、子どもに関わる人や組織を結び付けてコンセンサスを得ていく組織としても機能しており、日本でも既存の省庁の子どもに関わる施策や仕組みを補完し、子どもの状況を改善していく役割を果たしていくと思います。

「行政から独立した組織だと好き勝手やるのではないか」と懸念する方もいらっしゃるようですが、海外のケースを見ていると、それほど強い権限を持っているわけではありません。制度改善の提言はしますが、提言から先は国会や行政が判断することだと考えられています。

海外の「子どもコミッショナー」の多くが国レベルの組織

――海外では、子どもに関するコミッショナーはどれくらい設置されているのですか。

ユニセフ本部が網羅的な調査を行ったのは2012年で、そのときには70カ国以上にありました。10年経っているので今はもっと多いと思います。最も早く設置したのはノルウェーで、子どもの権利条約ができる前の1981年のことでした。北欧はどこの国も設置していますね。

海外のコミッショナーの多くが、国レベルの組織です。カナダは国レベルのものはありませんが、すべての州に設置されています。英国も同様で、イングランド、ウェールズ、スコットランドという単位で設置されていて、国に関わる問題はイングランドのコミッショナーがカバーできることになっています。米国のように一部の州にしか置かれていない国は、例外的です。

アジアも、フィリピンやネパール、インドネシアなどにあります。国によっては、子どもに特化した組織ではなく、いろいろな人々の人権を扱う国内人権機関の中に、子どもの権利担当部門を置いている国もあります。このタイプの国も多く、国連の子どもの権利委員会はどちらの形でもよいとしています。

また、個別救済の取り組みは国によってばらつきがあります。

――日本では、国と地域、どちらのレベルでの設置が適しているでしょうか。

国レベルの組織があれば法律などの改正提言ですべての子どもの権利状態が改善されることにつながりますし、地域による差がないようにするという意味からも、まずは国レベルのものが必要ではないでしょうか。そのうえで、都道府県にもあれば、個別救済などよりきめ細かく対応できると思います。

――コミッショナーの働きで成果を上げた海外の事例を教えてください。

スコットランドでは以前、体罰を一部容認する法律がありましたが、コミッショナーが長年この問題に取り組み、法律の改正を提言して体罰禁止を実現しました。刑事責任を科す年齢の引き上げも提言して実現しています。ちなみにメンバーはコミッショナーを含めて15人で、各自が精力的に動いていると聞きます。

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