「6人に1人が医学部進学」の豊島岡女子が、22年度から完全中高一貫へ 私立文系廃止、全員が高3まで理数学ぶ新体制
「5分間の禅」運針で時間の使い方とスイッチ力を鍛える
人気・実力ともに上昇が続く中、新体制を打ち出した豊島岡女子。つねに動きがあるように見えるが、竹鼻氏は、学校としての姿勢に変化はないと話す。
「もちろんつねに新しい取り組みは考えていますが、変わらずに続けていることも多いかなと思います」
不変の取り組みの1つとして挙げるのが、豊島岡女子の名物ともいえる「運針」だ。裁縫専門学校を前身とする同校では、毎朝8時15分からの5分間、1メートルの白布にひたすら赤い糸を通す。「5分間の禅」として集中力を養うものだが、これが生徒たちの時間の使い方を変えるという。
「入学直後はまったく縫えなかった生徒も、やがて同じ5分でも見違えるほど縫い進めることができるようになります。短い時間でも『5分しかない』と取るか『5分もある』と取るか。こうした訓練によって、時間の使い方、切り替え方がうまくなるのです」

短い時間もうまくスイッチしながら有意義に使えるようになると、学校生活は密度が濃く忙しいものになる。勉強はもちろん、コロナ禍の時間制限下でも、クラブ活動の質を落とさなかったことが好例だろう。そのため竹鼻氏は、「うちは忙しいのが好きな子に向いている学校です」と断言して笑う。
その傾向は入試問題にも表れている。豊島岡女子の入試では、算数の解答の途中式を採点対象にしない。竹鼻氏は「途中式を丁寧に書いていたら、おそらく本校の入試問題は時間内に解ききれないはず」と言う。
「入試について、正確さとスピードのどちらが重要かと聞かれることがあります。この2つはどちらかではなく、どちらも重要なもの。計算ミスはケアレスミスではなく、致命的なミスなのです。相手に伝わるように表す記述の仕方は入学してから教えるので、入試では速く、そして正確な解答を目指してください」
厳しい言葉にも聞こえるが、生徒たち自身に話を聞くと、意外にも「どんな子にも居場所がある学校だと思う」と答える子どもが多いという。小学校では友達があまりいなかったが、中学に入って初めて趣味の話ができる友達ができた生徒もいるそうだ。
「のんびり空を見上げているような子の保護者から『うちの子はやっていけるでしょうか』と聞かれることがありますが、大丈夫ですとお答えしています。入学すると周りの友達が手を引き、生徒同士で互いに補い合うようになります。最初から何でも得意な子はいません。のんびり屋さんもいつしか周囲と同じようにてきぱきと動けるようになって、高校生にもなれば成長して、しっかり後輩の指導もしてくれますよ」
竹鼻氏が唯一「うちに向いていないかも」と挙げるのは、「のんびり空を見上げているような子に、そのまま空を見ていてほしいと考えているご家庭」だ。同校のアドミッションポリシーには、「努力を重ねて自らを高めたい人」「さまざまなチャレンジを楽しみたい人」という像がある。求められるスピードを充実感と捉えて楽しめる人なら、これほど成長が見込める場所はないかもしれない。
(文:鈴木絢子、注記のない写真:豊島岡女子学園提供)
東洋経済education × ICT編集部
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