「6人に1人が医学部進学」の豊島岡女子が、22年度から完全中高一貫へ 私立文系廃止、全員が高3まで理数学ぶ新体制
22年度医学部延べ現役合格者数136人、実際に56人が進学
2022年の大学合格実績でも、医学部の延べ合格者数は現役生のみで136人に上り、実際に56人が医学部に進学。これは卒業生の約6人に1人が医学部に進むという数字だ。さらに既卒者も含めた医学部の延べ合格者数は例年200人を超えており、22年も212人という結果だった。進学先を分野別に見てみると、医学21.2%に次いで理学・工学が合わせて19.7%で理系に強いことがわかる。また例年より減ってはいるものの東大への合格者も14人となっている。
生徒の将来の進路希望に傾向はあるのだろうか。竹鼻氏によると、やはり「医者になりたい」という生徒は一定数いるが、将来の夢については「決まっていない」という回答が最多だという。そんな生徒をサポートする、同校の人脈を生かした取り組みも行っているそうだ。
「中2の夏休みに、生徒がOGなどを訪問をする『卒業生インタビュー』を実施しています。訪ねる卒業生は生徒自身で選ぶことができるので、まったく未知の職業を見学に行く子もいれば、医師志望で診療科まで絞って訪ねる子もいます。インタビューの結果は、休み明けの9月にまとめて共有します。こうした経験を通して、少しずつ未来の自分を想像していければいいですね」
卒業生が快く協力してくれる背景には、在学中の過ごし方が影響しているだろう。豊島岡女子ではクラブ活動にも注力しており、卒業後も下級生と上級生の関係が続いているという。
「クラブ活動では後輩の指導の難しさや先輩との付き合い方など、タテの関係も学んでほしいと思っています。いちばんの目的はいい成績を残すことではなく、活動を通じた学び。それでも生徒たちはまじめなので『先輩よりいいものを目指したい』と熱心です。私から見ると頑張りすぎに思えるほど(笑)。でも共に困難を乗り越えた経験からか、クラブ活動で得た友達とはとくに絆が強くなるようです」
いい成績が最重要ではないとのことだが、囲碁などのクラブの成績は全国レベル。コーラス部は21年の東京五輪開会式でも歌声を披露している優秀さだ。
豊島岡女子ではこれまで、クラブ活動では文化祭、ものづくりの学びでは「T-STEAM:Pro」と、生徒が普段の成果を発表する場を大切にしてきた。だが新型コロナウイルス感染症の拡大により、「T-STEAM:Pro」の参加校に制限がかかり、文化祭はオンラインやハイブリッドでの開催が続いた。
「教員たちはいつも『生徒の笑顔のために』という気持ちで頑張っています。コロナ禍でも、日頃の活動の成果を発表する場を何とか設けられないかと考えました」
そこで昨年夏には、感染対策を徹底し、小学生を対象とした特別見学会を実施した。1時間という短い時間ながら、生徒たち自身が小学生に向けてクラブ発表を行った。また、この2月には中学合唱コンクールも開催した。
「生徒は感染予防も頑張りましたし、保護者の理解を得ることもでき、学校には激励の電話もいただきました。久しぶりに、あるいは初めて観客の前で発表できて、生徒たちもとてもうれしかったようです」
授業も対面での実施にこだわっている。昨年8月には全国の新型コロナ感染者がピークを迎えていたが、同校ではクラスターなども出さずに対面授業を続けた。
「9月の学校見学会に来た方には、オンライン授業にしていないのかと驚かれました。でも一方通行ではなく互いに学び合うには、やはり同じ教室にいることが重要です。休み時間の会話や放課後のクラブ活動も欠かせない学びだと思います」
こうした「在校生の生の姿」を見ることができるためか、同校は受験生からの評価も高い。近年は入学者のうち約7割が豊島岡女子を第1希望にしており、保護者からも「子ども自身がこの学校を気に入っている」という声を聞くことが多いそうだ。