楽天がプロゴルファー契約でゴルフに注力する訳 所属先企業となるのは、稲見萌寧選手が初めて

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同じゴルフ場予約ビジネス、ゴルフ用品販売をしているゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は、2021年の売上高395億円。そのうちゴルフ場予約の売り上げは67億円だった。楽天の送客数はGDOより多いと推定されるので、売り上げも同様であろう。日本のゴルフ場のべ利用者数は年間9000万人であり、楽天GORAからのゴルフ場への送客数は決して少なくない人数だと推定される。

反町氏は今後のゴルフ場ビジネスの展開について「日本のゴルフ人口の減少傾向で、ゴルフ場が減ることはわれわれの在庫が減少することになり、放置しておけない。少しでもゴルフ場の経営がよくなるDX支援をいろいろな角度から研究・開発をしている。ゴルフ場の経営効率化に貢献して、課題を解決していきたい」と話す。

反町氏によれば、楽天はゴルフ場の売り上げを最大化するため、過去の予約やキャンセル状況などのデータから早期予約や販売価格の適正化の『ゴルフ場コンサルティングサービス』の提供を開始している。また、芝の管理などについて、ゴルフコース管理のDXを推進する『楽天GORAターフマネージメントサービス』の提供も開始しているという。まさにネット企業ならではのできる取り組みだ。

既存ゴルファーの継続と新規獲得に向けて

さらに楽天市場におけるゴルフ用品の売り上げも大きいことは予想される。楽天のゴルフ関連商品の取り扱い開始は1998年からだ。

矢野経済研究所では、直近の国内ゴルフ用品販売金額は約4000億円で、そのうち少なく見積もっても500億円がECサイトでの販売と推定している。

最近では、コロナ禍で3密を避けるゴルフに注目が集まり、2019年と2021年の比較で、楽天はゴルフウェア関連商品の取扱高伸長率:約1.4倍、ゴルフクラブ関連商品の取扱高伸長率:約1.5倍という数値になっている。ただ金額は開示されていない。コロナ禍でネット通販の強みがいかされているのは事実だろう。

楽天は1億人以上の楽天会員を擁し「楽天経済圏」を構築している。その中で、ゴルフをしない人をゴルファーにする取り組みについて反町氏は「ゴルフをしない人にゴルフをしてもらう取り組みよりも、ゴルフがきっかけで楽天サイトに来てくれた人が、いかにゴルフを継続してもらうかに注力している」と話す。新規ゴルファー創出まではまだ手が回っていないのが現状だ。

楽天は企業理念として「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションを掲げている。稲見萌寧選手の所属契約をきっかけに、ゴルフへの応援をさらに強めて、若い世代にゴルフの楽しさを伝えてほしいと筆者は願っている。

嶋崎 平人 ゴルフライター

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しまさき ひらと / Hirato Shimasaki

1976年ブリヂストン入社。1993年からブリヂストンスポーツでクラブ・ボールの企画開発、広報・宣伝・プロ・トーナメント運営等を担当、退職後、ライターのほか多方面からゴルフ活性化活動を継続。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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